妊娠前の減量介入に対するメタアナリシス(Fertil Steril. 2024)

妊娠前の減量介入に対して、妊娠・出産にどの程度影響を与えるかは様々な見解があり、特に薬物治療を実施するかどうか、横一線で減量期間を設けてからの不妊治療開始とするかどうか意見が分かれます。過去にも様々な報告をとりあげてきましたが、妊娠前の減量介入に対するメタアナリシスが報告されましたのでご紹介します。

《ポイント》

減量介入は妊娠・出産・流産にとってネガティブに働くことはありませんが、効果に対してはまちまちそうです。横一線ではなく年齢・不妊原因などを含めた個別化した介入検討が検討しましょう

《論文紹介》

Ann E Caldwell, et al.Fertil Steril. 2024 Aug;122(2):326-340.  doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.02.038.

肥満女性において、生活習慣の改善および/または薬物療法を用いた減量介入が妊娠、生児出生、流産に及ぼす有効性を検討することを目的としたシステマティックレビュー・メタアナリシスです。複数のデータベースからWiley経由で2022年7月6日まで実施しました。妊娠を計画している過体重/肥満の女性において、生活様式±薬物による減量介入を検討したランダム化比較試験を対象としました。ランダム効果メタアナリシスを実施し、各評価項目のリスク比(RR)を求めました。介入タイプ、対照群タイプ、不妊治療、介入期間、BMIによるサブグループ解析を実施しました。主要評価項目は妊娠、生児出生、流産としています。
結果:
妊娠については16研究(n = 3,588)、生児出産については13研究(n = 3,329)、流産については11研究(n = 3,248)について、ナラティブレビューとメタアナリシスが可能でした。減量介入群女性は、対照群女性と比較して妊娠する可能性が高くなりました(RR = 1.24、95%CI 1.07-1.44;I2 = 59%)。しかし、生児出生(RR = 1.19、95%CI 0.97-1.45;I2 = 69%)や流産(RR = 1.17、95%CI 0.79-1.74;I2 = 31%)は差が認めませんでした。
サブグループ解析によると、12週間以下の減量介入に無作為に割り付けられた女性(9研究、RR=1.43;95%CI 1.13-1.83)およびBMI>35kgの肥満女性(7研究、RR=1.54;95%CI 1.18-2.02)は、対照群女性と比較して妊娠する可能性が高くなりました。流産は不妊治療介入群で高くなりました(n = 8、RR 1.45;95%CI、1.07-1.96)。

《私見》

この報告の意味するところは、現実でも迷うところがあり、とても興味深く拝読しました。減量してからの妊活は、夫婦年齢の上昇・不妊治療開始時期の遅延とも繋がるため、本当に効果的かどうかわかりません。そのうえ、不妊原因別や不妊治療別・女性年齢別での解析がなされていません。
また、過体重/肥満を認める女性の対照群も全くの未介入ではないため、差がつきにくかった可能性もあります。
今回の報告を読んで思ったことは減量を推奨することは方向性として間違っていないですが、その間に妊活をストップことは周産期リスク増加という懸念点を除けばなさそうです。

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総論 

肥満への管理・介入 

肥満の影響 

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文責:川井清考(院長)

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