女性BMIは内膜受容能のずれに影響する(論文紹介)

内膜受容能検査(ERA検査)を実施するときに、女性の体重変化があると子宮内膜受容能が変化する可能性に触れます。
体重が増えると内膜受容能はどう変化するのでしょうか。

≪論部紹介≫

José Bellver, et al. Reprod Sci. 2021. DOI: 10.1007/s43032-021-00631-1

BMIの上昇が、着床の窓を変化させるかどうか内膜受容能検査(ERA検査)を用いて前向きに検討しています。
子宮形態正常であり、反復流産や反復着床不全の既往がない不妊女性170名をリクルートし、これらの女性を正常体重(18.5〜24.9kg/m2;n=44)、過体重(25〜29.9kg/m2;n=29)、軽度肥満(30.0〜34.9kg/m2;n=54)、中等度もしくは重度肥満(>35kg/m2;n=43)に分類した。また患者をBMI  30kg/m2をカットオフとし正常群(n=73)と肥満群(n=97)にわけて検討しました。
ERA検査の条件設定ですが、エストロゲン補充し、子宮内膜 7mm以上となり、血清エストラジオール濃度 100pg/ml前後、血清プロゲステロン濃度 1ng/ml以下の時点で、プロゲステロン膣剤(400mg、1日2回)補充を開始しP+5(120時間)に子宮内膜生検を行っています。
結果:
臨床結果と内膜受容能検査を検討したところ、BMIが上昇するに伴い、血糖値、TSH、インスリン、LDLコレステロール、トリグリセリド、収縮期・拡張期血圧の増加、HDLコレステロールの低下を認めました。内膜受容能検査はpre-receptiveが増加しました。
結論:
女性肥満は内膜受容能を遅らせ、患者の代謝状況に影響を与えます。

 

  receptive Early receptive Pre-receptive
BMI 18.5-24.9 34/44 (77.3%) 9/43 (20.9%) 1/35 (2.8)%
BMI 25-29.9 22/29 (75.9%) 2/24 (8.3%) 5/27 (18.5%)
BMI 30-34.9 38/54 (70.4%) 4/42 (9.5%) 12/50 (24.0%)
BMI 35- 30/43 (69.8%) 2/32 (6.2%) 11/41 (26.8%)
  receptive Early receptive Pre-receptive
正常群 56/73 (76.7%) 11/67 (16.4%) 6/62 (9.7%)
肥満群 68/97 (70.1%) 6/74 (8.1%) 23/91 (25.3%)

 

≪私見≫

女性の過体重は、痩せることが妊娠・出産への近道です。ただ過体重による妊娠成績の低下を患者の責任だけにするのも何か違う気もします。精神面サポート・栄養管理・運動管理含めてチームでサポートできる体制を作っていかなくてはいけないのはわかっているのですが、なかなか難しい現状があります。
徐々に整えていきたいと思っています。

文責:川井清考(院長)

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