BMIはどれくらいから体外受精成績に影響を与える?(論文紹介)

体外受精治療を希望する女性にとって、肥満は妊娠に悪影響を及ぼすことが示唆されています。卵子と胚の質、卵胞形成、子宮内環境の障害、胚発生、代謝変化、およびこれらの因子間の相互作用が関与している可能性があるからです。
ただ、論文のほとんどの切り口がBMI 30以上、35以上だと悪化するという報告で、どれくらいのBMIがベストなのか明らかになっていませんでした。こちらを示した報告です。
Kefu Tangら. J Assist Reprod Genet. 2021.  DOI: 10.1007/s10815-021-02082-8.

≪論文紹介≫

体外受精後の臨床妊娠率(CPR)、出生率(LBR)、流産率(MR)のRelative riskを推定するために、ランダム効果モデルを用いたメタアナリシスを実施しました。
1988年から2020年3月までの報告を検索し975,889サイクルを対象とした18件のコホート研究を検証しました。(移植方法:9件は新鮮胚移植のみ、3件は凍結胚移植のみ。卵子の由来:6件は自己卵子のみ、2件はドナー卵子。)
結果:
975,889サイクルを含む18件のコホートベースの研究が含まれました。
BMIが5増加するごとに、Relative riskは臨床妊娠率で0.95(95%CI:0.94-0.97)、出生率で0.93(95%CI:0.92-0.95)、流産率で1.09(95%CI:1.05-1.12)でした。
BMIと臨床妊娠率の間には、肥満女性(BMI>30)で臨床妊娠率が急激に低下する非線形の関連がありました。非線形用量反応メタアナリシスでは、BMIが16~30の広い範囲で出生率の比較的平坦な曲線が示されました。更に、BMIと流産率の間にはJ字型の関連が観察され、流産リスクが最も低いのはBMIが22~25の時でした。結果女性のBMIが5単位増加するごとに、CPRとLBRでそれぞれ5%と7%のリスクの統計学的に有意な減少と関連していました。また、BMIが5単位増加するごとに流産の相対リスクが9%増加することも明らかになりました。

≪私見≫

日本人には当てはまるかどうかは、なんともいえませんが、BMIが25を超えると成績としては良くなさそうですね。
今まで、下記のような興味深い報告もあります。治療の参考にしていきたいと思います。
①BMIの増加に伴う異数体流産率の増加は認められておらず、卵子・胚質の低下は染色体以外の複雑な要因によって行なっている可能性がある。(Goldman KNら.Fertil Steril. 2013)
②胚移植に基づくサブグループ分析では、凍結融解胚盤胞移植の臨床妊娠の相対リスクでは差がなく、新鮮胚移植で低下する傾向が認められた。(Adamson GDら. Fertil Steril. 2018)

≪現在まで「肥満・BMI」で取り上げた記事≫

(一般不妊)
夫婦の体重(BMI)は妊娠しやすさ(不妊)に影響する?(論文紹介)
肥満は人工授精の成績に影響する?(論文紹介)
肥満女性のダイエットは妊娠率を増加させる?(論文紹介)
(体外受精)
女性の肥満は流産に影響するの?(論文紹介)

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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