夫婦の体重(BMI)は妊娠しやすさ(不妊)に影響する?(論文紹介)

女性の肥満・低体重(やせすぎ)が妊娠しやすさについて議論にあがることが多いと思いますが、夫婦それぞれの肥満・低体重はどうでしょうか。最近、中国の論文は生殖医療分野でも圧倒的に日本より有名雑誌に掲載されている印象があります。夫婦の体重に注目したビッグデータの妊娠との関連を示した論文です。ご夫婦で話し合うきっかけになれば良いと思います。

Yue Zhangら.Fertil Steril. 2020. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2020.05.041

≪論文紹介≫

カップルの妊娠前の体格指数(BMI)と妊娠までの時間(TTP)との関係を探ることを目的として組まれた後方視的コホート研究です。地域の母子保健または家族計画サービス機関が中心となり、2015年1月1日から2017年12月31日までの全国妊娠前無料検診事業に参加している対象夫婦の合計2,301,782組(合計3,825,727組の中国人カップル(22歳以上の男性と、妊娠歴のない20~49歳の女性)を対象に3ヶ月ごとに連絡をとり一年間追跡をしました。感染症や追跡できない方などを除外しています。)を対象とし、妊娠までの期間を検討しました。BMIは中国のガイドラインにあわせて、BMIは、低体重(18.5kg/m2未満)、正常(18.5~23.9kg/m2)、過体重(24.0~27.9kg/m2)、肥満(R28.0kg/m2)に分類しています。
妊娠までの期間は下記で評価しています。
①妊娠群
(最終月経―質問に答えた日)÷平均月経周期+1
②非妊娠群
(最後にフォローアップされた日―質問に答えた日)÷平均月経周期+1

結果:
低体重、過体重、または肥満は、夫婦のTTPの延長と関連していました。最適BMI値は女性で20.61-23.06kg/m2、男性で22.69-27.74kg/m2となりました。夫婦間の両方が正常なBMI値のカップルと比較して、パートナーの両方が低体重または肥満のカップルでは、妊娠率がそれぞれ10%(妊孕性オッズ比[FOR] 0.90;95%CI、0.88-0.92)、19%(FOR 0.81;95%CI、0.78-0.84)低下しました。正常なBMIの女性と太りすぎの男性の組み合わせは、最大の妊娠率(FOR 1.03;95%CI、1.02-1.03)であり、肥満の女性と太りすぎの男性の組み合わせは、最も低い妊娠率(FOR 0.70;95%CI、0.65-0.76)となりました。

≪私見≫

この論文は痩せすぎも妊娠しづらいことを示してくれています。やはり適切な運動習慣、食生活習慣をご夫婦で見直すことが必要なのだと思います。
なぜ、太ると妊娠しづらくなるの?というご質問に対しては、様々な理由があります。下記にまとめてみました。私たちが医療を行う場合も注意をして介入する部分ですのでご確認ください。

【女性の過体重/肥満】
①卵子の数と量の減少
②女性の視床下部-下垂体-卵巣軸に影響し、不規則な排卵や無排卵
③性的頻度の低下や性的機能障害のために低下
④黄体機能不全
⑤脂肪組織に蓄積された環境毒素

【男性の過体重/肥満】
①射精量、精子数、運動性、量の減少
②精子形成を調節するホルモンレベルの変化
③睾丸の温度上昇
④脂肪組織に蓄積された環境毒素
⑤酸化ストレスレベルの上昇
⑥勃起不全の発生率の上昇

文責:川井(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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