肥満と不妊(ASRM 専門家委員会2021年)

肥満と生殖について、2021年ASRM 専門家委員会のコメントが報告されました。肥満の定義はインスリン抵抗性と密接に関連した脂肪蓄積による疾患でBMI(body mass index)に基づいています。
BMIと体脂肪率は正の相関関係にありますが、性別、年齢、人種・民族によって差があります。アジア人は白人に比べてBMIが23〜25kg/m2と低くても糖尿病や心血管疾患の発症リスクが高くなります。今回のコメントの要点をまとめさせていただきます。
結論として、肥満は生殖や母体・胎児に与える影響が大きく妊娠前にしっかりカウンセリングを行うべきとしています。ただし、体重管理のために長期間かかってしまうと加齢がすすみ、逆にリスク上昇を促してしまう可能性があるため、バランスを見ながら患者さまに生殖医療を提供するタイミングを検討すべきとしています。

Obesity and reproduction: a committee opinion
Fertil Steril. 2021. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2021.08.018

  • 肥満の女性や男性の多くは妊娠可能です。
  • 女性の肥満は、排卵機能障害、排卵刺激に対する卵巣反応性の低下、卵子や子宮内膜の機能の変化、出生率の低下と関連しています。
  • 肥満女性は、妊娠中に母体および胎児の合併症を発症するリスクが高くなります。
  • 男性の肥満は、生殖機能の低下と関連している可能性があります。
  • 肥満に対する治療は、女性も男性も生活習慣の改善が第一であり、改善がない場合などに補助的な医学療法が行われるべきです。
  • 女性および男性における肥満手術は、体重減少のための生活習慣の改善および内科的治療の重要な補助手段でありますが、女性の妊娠許可は術後1年間延期すべきとされています。

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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