正常核型胚の排卵周期凍結融解胚移植のBMI別成績(レトロスペクティブコホート2023)

BMIが25を超えると、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、巨大児などの周産期合併症リスクが高まることとされていますので、妊活をされる場合、過体重・肥満の女性の方は生活習慣の改善が好ましいとされています。
胚移植成績も下がるとされていますが、正常核型胚の排卵周期凍結融解胚移植の成績に限った報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

減量は、糖尿病や心血管疾患と同様に不妊治療に役立つという考えは変わりません。しかし、正常核型胚の排卵周期凍結融解胚移植ではBMI別にそこまで大きな成績差がでませんでした。

≪論文紹介≫

Isabel Beshar, et al. J Assist Reprod Genet. 2023 Mar 31.  doi: 10.1007/s10815-023-02787-y.

BMIが正常核型胚の排卵周期凍結融解胚移植での生児獲得率に影響を与えるかどうか比較検討した単一施設によるレトロスペクティブ・コホート研究です。
2016年から2020年に、正常核型胚の排卵周期凍結融解胚移植の成績を比較検討しました。比較はBMI区分:正常体重(18.5~24.9)、過体重(25~29.9)、肥満(≧30)により区分して検討しています。低体重BMI(<18.5)は解析から除外しされました。主要評価項目は生児獲得率、副次評価項目は臨床妊娠率としました。
結果:
425名562周期の修正排卵周期凍結融解胚移植(正常体重群: 316周期、過体重群:165周期、肥満群:81周期)で比較検討しました。すべてのBMIカテゴリーの生児獲得率も統計的差を認めませんでした(正常体重群:55.4%、過体重群:61.2%、肥満群:64.2%)。臨床妊娠率も同様の結果でした(正常体重群:58.5%、過体重群:65.5%、肥満群:66.7%)。交絡因子を調整しても同様の結果となりました。

≪私見≫

今回の研究ではrhCGトリガー7日後、もしくは血中LHサージ6日後に胚移植を行い、胚移植3日前から黄体補充(Endometrin 100 mg もしくはPrometrium 200 mg 2回/日)を行なった場合の成績となっています。
今回の結論では差がありませんでしたが、やはりBMI>40では成績の低下がみられたようで、肥満は排卵周期凍結融解胚移植では成績低下が見られないという解釈ではなさそうです。
アジア人コホートをわけたサブグループ解析でも人種差による結果が変わらないとされているのも面白い結論かと思います。

~関連ブログもご参照ください~
◇総論 

◇肥満への管理・介入

◇肥満の影響 

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

亀田IVFクリニック幕張