肥満がある方は痩せたら排卵は戻ってくる?(国内の報告)

肥満がある女性が痩せると、妊活にはプラスのことが多いというのは周知の事実です。生活習慣に基づく結果なので、すぐに痩せることは難しいかもしれませんが、肥満で排卵障害がある女性は体重の7%の減量と、週150分以上のウォーキングなどの中程度の運動習慣を心掛けることを推奨されています。
通常の食事摂取量から500〜1000kcal/日減らせば、1週間で0.5-1kgの体重減少が期待でき、1000〜1200kcal/日の低カロリー食では6ヶ月間で平均10%の体重減少を達成でき、カロリー制限は減量を成功させるための基本原則であり、食事の構成はそれほど重要ではないとされています。
不妊ブログ目次(-2021/12:一般不妊・男性・不育症・治療予後編)のライフスタイルのところに肥満に関する記事は複数取り上げておりますので参考になさってください。
よく、海外の高度肥満のひとを対象とした報告で国内ではあてはまらないのではないか?と質問を受けますので国内の報告もご紹介させていただきます。

≪論文紹介≫

Toshiya Matsuzaki, et al. Reprod Med Biol. 2017. DOI: 10.1002/rmb2.12034

排卵障害のある肥満女性39名を登録した後、通常の3食のうち1食または2食をマイクロダイエット(MD)(240kcal/食)に置き換えて24週間食事制限を行いました。
対象者の女性は平均29歳、BMI 25以上であり、二ヶ月以上月経がこない排卵障害でPCOSの基準を満たしている方としました。
介入前、介入12週後、介入24週後に身体検査、内分泌検査、生化学検査を実施しました。39名の女性のうち、26名はクロミフェンを服用しませんでした。ダイエットの成果に応じて3つのグループ(5%未満の体重減少、5%~10%の体重減少、10%以上の体重減少)に分け、排卵障害の改善を検討しました。
結果:
39名の女性のうち31名(81.5%)に5%以上の体重減少が認められました。クロミフェン治療を受けていない26名のうち18名(69%)で排卵障害の改善を認めました。特に5%~10%の体重減少と10%以上の体重減少を示した女性(計81.0%)では、5%未満の体重減少を示した群と比較して、排卵障害の改善は著名でした。排卵障害のある肥満患者に対して、低カロリー食を用いてダイエットすることで効果的に体重を減少し、排卵障害が改善することがわかりました。

≪私見≫

この論文を通してもそうですが、ダイエットは、やはり生活習慣の改善を含めて長期戦ですね。12週、24週での調査ですが、不妊症で苦しむ女性にとっては3ヶ月、6ヶ月は取り返しのつかない時間に感じてしまうと思います。また、ダイエットしても排卵障害が改善しない方もいるでしょうから、少しでも患者が希望をもてる意味のある対話ができるようにしていきたいところです。
今回の結果を通して、HOMA-IR、コレステロール、TG、空腹時血糖、肝機能が異常な方はダイエットで改善しているので、ひとつの比較評価項目としてモニターしてもいいと思います。
total testosterone がベースの 0.5-1.0 ng/mLから1.5 ng/mLに増加した群、もともと空腹時インスリン値が20 uU/mLと低い群はダイエットをしても排卵障害の改善にはつながっておらず、この辺りを患者様と情報共有モニターしながら妊娠にむけて共に向き合うことが大事なんだと思います。

文責:川井清考(院長)

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