BMI 40以上の肥満患者の体外受精リスク(Am J Obstet Gynecol. 2024)
BMIが非常に高い女性の体外受精妊娠時の予後について触れる報告は数多くありません。体外受精を実施したBMI高値女性における体外受精、周産期予後を評価した報告をご紹介いたします。
≪ポイント≫
高次医療施設でしっかり管理したところ、体外受精を実施したBMI30以上の女性において、BMI 30-34.9群とBMI 35以上群ではPEリスクが上昇する以外、他のリスク上昇が認められませんでした。高度肥満はハイリスクと認識し、しっかりした高次医療施設での管理が好ましいと考えられます。
≪論文紹介≫
Jenny S George, et al. Am J Obstet Gynecol. 2024 Feb;230(2):239.e1-239.e14. doi: 10.1016/j.ajog.2023.10.018.
2012年1月1日から2020年4月30日までの体外受精/顕微授精2,069周期のレトロスペクティブコホート研究です。妊娠、周産期予後を追跡するため妊娠継続867名女性での解析を第2コホートとしました。BMI 40以上の女性は、専門医による診察・術前評価を実施しました。周期開始時のBMI(30~34.9、35~39.9、40~44.9、45~49.9、50〜)でグループ分けしました。BMI 30~34.9を基準群として、採卵時年齢、患者年齢、胚質、移植方法、併存疾患などの交絡因子を調整し、対数二項回帰およびオフセット付きポアソン回帰を行いました。主要評価項目は出生率としました。副次評価項目は、受精率、胚盤胞率、流産率、重症PE発生率、妊娠糖尿病、陣痛誘発、帝王切開分娩、早産、出生体重などとしました。
結果:
体外受精/顕微授精2,069周期のうち、BMI 30~34.9群1,008周期、35~39.9群547周期、40~44.9群277周期、45~49.9群161周期、50~群76周期でした。妊娠継続後の出生率に差は認めませんでした。BMI 50~群は、30~34.9群と比較して、重症PEリスクが高くなりました(absolute risk reduction 2.75;95%CI 1.13~6.67)。受精率、胚盤胞率、流産率、妊娠糖尿病、陣痛誘発、帝王切開分娩、早産、新生児出生体重は群間で差は認めませんでした。
≪私見≫
BMI 30-34.9を基準として BMI 35以上を比較する報告なんて国内ではまず出てこないですね。
この報告は高度肥満の妊娠時の安全性を担保する報告ではなく、高次医療施設でしっかり管理したところ、BMI 30-34.9女性と同等の周産期リスクにとどまったという解釈に留めておくのが良いかと思います。
体外受精成績、臨床妊娠成立後の成績がありますが、コホートが異なるため生化学妊娠や着床率のデータがないのが残念ですね。
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文責:川井清考(院長)
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