着床には正常核型胚であってもTE細胞数は重要(Fertil Steril. 2016)

TE細胞数が着床時には重要という報告は多々あります。では、TE生検をおこなったうえでの正常核型胚でも着床成績にTE細胞数が重要なのでしょうか。
TE細胞はしっかり取らないと着床前検査の診断がつかなくなりますし、しっかり取りすぎると胚への侵襲度が高くなります。同じ手技を行っても成績が異なる可能性が指摘されています。
着床前検査時にTE生検する細胞数が胚盤胞の着床・発生能に影響を与えるかどうか調査した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

Gardner分類TEグレードが低い胚からTE生検をする場合、生検細胞数を多く取ると正常核型胚でも着床率が下がることがわかりました。

≪論文紹介≫

Shuoping Zhang, et al. Fertil Steril. 2016 May;105(5):1222-1227.e4. doi: 10.1016/j.fertnstert.2016.01.011.

着床前検査時にTE生検する細胞数が胚盤胞の着床・発生能に影響を与えるかどうか調査したレトロスペクティブコホート研究です。
大学付属生殖医療施設で、TE生検をFISH解析による着床前検査を実施するために実施した女性を対象としました。評価項目は胚盤胞TE生検細胞数、生存率、着床率としました。
結果:
生検されたTE細胞数は、TEグレードと胚培養士の経験に影響されました。診断効率は、生検細胞数が1~5個の場合に上昇し(86.7%、91.7%、96.0%、96.8%、98.7%)、6個以上で最大となった。臨床効率を比較するため、胚盤胞を生検されたTE細胞数により、1~5、6~10、11~15、16~41の4群に分けた。Gardner分類TEグレードA胚盤胞については、4群間で生存率と着床率に差は認められませんでした。Gardner分類TEグレードBおよびC胚盤胞では、生存率は4群間で差は認められませんでしたが、生検TE細胞数の増加に伴い、移植率は有意に低下する傾向が認められた。

≪私見≫

この報告の診断率は現在行われているNGSベースではないため、参考程度にしか使用できませんが、TE生検後の着床率は非常に参考になります。
Gardner分類TEグレードA胚盤胞サブグループでは、生検TE細胞数1~5、6~10、11~15、16~41の各群で、着床率はそれぞれ60.4%、56.9%、 49.0%、56.8%。グレードB胚盤胞サブグループでは、生検TE細胞数1~5、6~10、 11~15、16~41の各群で、着床率はそれぞれ52.8%、40.1%、28.6%、22.2%。グレードC胚盤胞サブグループではでは、生検TE細胞数1~5、6~10、 11~15、16~41の各群で、それぞれ着床率は51.4%、30.8%、12.5%、0%。
Gardner分類TEグレードが低い場合の着床後の生化学妊娠・流産率が生検細胞数と変わらないとしていますが、症例数がほとんどなく比較検討は難しいのではと感じました。

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文責:川井清考(院長)

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