着床前検査は妊娠時のHCG低下に影響を与えるの?(Front Endocrinol (Lausanne). 2022)
着床前検査を行った場合には、絨毛・胎盤の元となるtrophectodermを生検してくるわけなので、その後の予後に影響するのではないか?と以前から懸念材料があります。中長期的な周産期予後は影響なさそうですが、妊娠初期にはどのような影響を与えるのでしょうか。今回は妊娠判定時の血清βhCG値に着目した論文をご紹介いたします。
≪ポイント≫
Gardner分類によるTE形態学的スコアが妊娠初期血清βhCG値と関連しており、TEグレードの高い胚盤胞ほど血清β-hCGが高くなることがわかりました。TE生検は、TEグレードB以下の胚盤胞の血清βhCG値にマイナスの影響を与えることもわかりました。
≪論文紹介≫
Yuan Li, et al. Front Endocrinol (Lausanne). 2022 Feb 18:13:794720. doi: 10.3389/fendo.2022.794720.
胚盤胞のTEスコアが異なる場合、TE生検が妊娠判定時の血清βhCG値に影響を及ぼすかどうかを評価することを目的としたレトロスペクティブ・コホート研究です。
2019年1月から2020年6月に実施された7,847単一胚盤胞移植周期が含まれ、TE生検群2,657周期と通常体外受精/顕微授精5,190周期を対象としました。さらにTE形態学的スコアに基づいて3つのサブグループ(それぞれTEスコアのグレードA、B、C)に層別化しました。胚盤胞移植後12日目(4w3d)の血清βhCG値、および周産期転帰について解析を行いました。
結果:
出生群について、Gardner分類TEグレードAでは、調整後4w3d血清βhCG値は通常体外受精/顕微授精群とTE生検群で差を認めませんでした(769mIU/mL vs.753mIU/mL、P=0.631)。TEグレードBおよびCでは、通常体外受精/顕微授精群はTE生検群と比較して有意に高い4w3d血清βhCG値を認めました(それぞれ690mIU/mL vs. 649mIU/mL、P=0.001;586mIU/mL vs. 509mIU/mL、P<0.001)。TE生検群と通常体外受精/顕微授精群の同じTEスコアのサブグループ間で、周産期転帰に差は認めませんでした。
≪私見≫
この論文は、非常に妊娠判定評価(ほとんどが排卵周期凍結融解胚移植)に参考になる論文です。
ただし、TE生検が妊娠判定時の血清βhCG値が低い群が、どの程度から生化学妊娠・流産にとどまってしまうかは記載されていません。同グループはTEスコアがGardner分類グレードBおよびグレードCの胚盤胞では、生検したTE細胞数が多いほど着床率が低下したと他に報告しておりますので、それで察しろということかもしれません。
もう一報 他のグループから着床前検査を行うと4w3d血清βhCG値が低下するという報告を過去のブログで報告しております。参考になさってください。
着床前検査は妊娠時のHCGの低下や周産期予後に影響を与えるの?(論文紹介)
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文責:川井清考(院長)
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