卵巣予備能低下は妊孕能を低下させる？（Fertil Steril. 2024）

血清AMH値と妊孕能との間に相関関係がないとSteinerらは報告しており、これがアメリカ産婦人科学会などのオピニオンに採用されています。
Anne Z Steine, et al. JAMA. 2017 Oct 10;318(14):1367-1376. doi: 10.1001/jama.2017.14588.
しかし、血清AMH値と妊孕能が影響するのではないかという報告も散見され、11研究4388名女性を対象としたメタアナリシスでも、血清AMH値と妊孕能との間に相関関係が影響をあたえそうだとしています。
Chenxi Lin, et al. Front Endocrinol (Lausanne). 2021 Oct 13:12:695157. doi: 10.3389/fendo.2021.695157.
今回、大規模前向き妊娠期間コホート研究がでてきましたので、ご紹介いたします。

≪ポイント≫

AMH値の低値（1 ng/mL未満）は、自然妊娠の妊孕能をわずかに低下させる可能性がありそうです。

Scott M Nelson, et al. Fertil Steril. 2024 Dec;122(6):1114-1123. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.06.024.

AMH値と妊娠期間との関連性を調査することを目的とした前向き妊娠期間コホート研究です。妊娠を望んでから3か月未満であり、モダン・フェルティリティのホルモン検査を購入した米国女性3,150名を対象としました。年齢、BMI、出産回数、喫煙状況、多嚢胞性卵巣症候群などの交絡因子を調整し、一般化線形混合モデルの枠組みの中で二項補完対数対数誤差構造を使用して、離散的な時間経過モデルを作成しました。感度分析は、不妊治療を行なっていない、規則的な月経周期（21～35日）の女性を対象に、代替的なAMHレベルカテゴリー（<0.7、0.7～8.5、>8.5 ng/mL）およびAMHレベルを連続変数として使用して実施されました。主要評価項目には、12周期以内の累積妊娠確率と月経周期ごとの相対的妊娠可能率としました。妊娠は自己申告による妊娠検査の陽性反応によって定義しました。
結果：
参加者は平均7.21±5.32周期のうちに1,325人（42.1%）が妊娠しました。AMH低値群（＜1 ng/mL、n = 427）は、AMH正常値群（1～5.5 ng/mL）と比較して、自然妊娠の可能性が低いことが分かりました（adjHR、0.77；95%CI、0.64–0.94）。AMH高値群（＞5.5ng/mL）と正常値群との間には差は認められませんでした（adjHR、1.11；95% CI、0.94–1.31）。妊娠率は、すべてのAMHカテゴリーにおいて、4周期目が最も高くなりました。妊娠率は、AMH低値群11.2%（95% CI、9.0–14.0）、正常値群14.3% (95% CI, 12.3-16.5) 、高値群15.7% (95% CI, 12.9-19.0) でした。規則的な月経周期における感度分析（n = 1791）では、AMH低値群では、AMH正常値群と比較して妊娠の可能性が低くなりました（adjHR、0.77；95％CI、0.61–0.97）。同様の結果は連続モデルでも認められました（adjHR、0.90；95％CI、0.85–0.95）。

≪私見≫

AMH・卵巣予備能 に関しては過去にも複数のブログを取り上げています。
少しずつAMHは体外受精成績以外にも影響を与えるという論調が増えてきている印象をもっています。

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文責：川井清考（院長）

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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