AMHについて(当院のデータをふまえて)
AMHは、生殖年齢女性では前胞状卵胞、小胞状卵胞の顆粒膜細胞から分泌され原始卵胞から一次卵胞への卵胞発育を抑制していることがわかっています。検査としては卵巣内の卵子数を反映し、年齢と共に減少するため卵巣予備能を検査として頻用されています。月経周期によるばらつきが少ないのが特徴ですが、ピルの内服の継続によって、また、妊娠中・分娩直後は値が低くなることも報告されています。
AMHは卵子の「数」を評価するものですが、卵子の「質」を評価するものではありません。AMHが低値でも普通に自然妊娠することが知られています。妊娠率とは関係しないものの不妊治療の決定方針にはとても重要です。体外受精時の調節卵巣刺激での発育卵胞数や採卵数とは相関しますので刺激法の選択やOHSS予防に役立ちます。
年齢に問わず、ばらつきが大きく正規分布しないので基準値は設定されていますが正常・異常の定義があるわけではありません。当院の2700名以上のAMHを年齢別に集積してみましたが、一定の傾向はみられていますがやはりばらつきは大きいです。検査をするからには基準値を設ける必要がありますので、私たちは患者様に1.5ng/ml未満であれば卵巣機能低下群と位置付け患者様にお伝えするようにしています。
海外では大企業に勤める女性へのワークライフバランスの福利厚生サポートとしての社会的卵子凍結という選択肢がはじまっています。ただし、凍結卵子を使用しない可能性や受精卵凍結に比べると妊娠成績が悪いことなどから、日本では社会的な卵子凍結は学会の位置付けとしても臨床試験の段階です。社会のニーズや価値観が大きく変化しているので、適切な対応を検討していきたいとおもいます。
文責:川井(院長)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。