妊娠中の運動について
妊娠中の運動について産婦人科診療ガイドライン産科編2020に取り上げられています。よくある質問でも多くあげられる声です。当院では、妊婦スポーツの安全管理基準(日本臨床スポーツ医学会)を参考に妊娠成立後の運動開始時期について12週以降で妊娠経過に異常がない場合とし、外傷を受けやすいスポーツを避け、心拍数は150を超えないように指導してきました。今回のガイドラインでは妊娠中の適度な有酸素運動をすすめるというアンサーもはいっています。妊娠中の運動をさけたほうがよい女性以外にはアメリカ、イギリス共にガイドラインでは「1日30分の有酸素運動を毎日行うことで周産期合併症を増加させることなく、健康維持・増進に寄与する」とされています。私としては妊娠中のスポーツを一目でわかりやすい表にしてくれたこと、患者さまよりよく尋ねられるホットヨガの記載があったことが説明しやすくなり嬉しいポイントです。
CQ107 妊娠中の運動(スポーツ)について尋ねられたら?
- 妊娠中に行う運動(スポーツ)は有酸素運動が好ましく、転倒や落下、接触の危険を有するあるいは競技的性格の強いスポーツや、仰臥位あるいは不動のまま立位を保持する姿勢は好ましくないと答える。(B)
- 以下の疾患・症状を有している場合、種類にかかわらず、妊娠中の開始・継続は勧めない。(A)
- 重篤な心疾患、呼吸器疾患、頸管無力症、持続する性器出血、前置胎盤、低置胎盤、前期破水、切迫流・早産、妊娠高血圧症候群
- 禁忌のない妊婦における適度な有酸素運動(スポーツ)には以下の効果があると答える。
- 早産や低出生体重児などの母児罹病を増加させることなく、健康維持・増進に寄与することが期待できる。(B)
- 妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩等を減少させる可能性はあるが、十分なエビデンスは得られていない。(C)
- 以下の症候が現れた場合、医師に連絡し、継続・中止について相談するよう勧める。(B)
- 立ちくらみ、頭痛、胸痛、呼吸困難、筋肉疲労、下腿の痛みあるいは腫脹、腹部緊満や下腹部重圧感、子宮収縮、性器出血、胎動減少・消失、羊水流出感など
妊娠中のスポーツ
種目 | 備考 | |
---|---|---|
好ましいスポーツ | ウォーキング / エアロビクス / 水泳 / 固定自転車 / ヨガ / ピラティス / ラケットスポーツ | |
好ましくないスポーツ | ホッケー / ボクシング / バスケットボール / レスリング サッカー / (ホットヨガ) | 接触や外傷の危険が高い |
危険なスポーツ | 体操競技 / 乗馬 / 重量挙げ / スキー(雪・水上) / スケート / ハンググライダー / スキューバダイビング / 激しいラケットスポーツ | 転びやすく外傷を受けやすい |
文責:川井(院長)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。