AMH値は自然妊娠の流産と関係しますか。(論文紹介)

卵巣予備能検査と解釈のアメリカ生殖医学会の見解(その1その2)で、卵巣予備能力は不妊症の予知にも、タイミング、人工授精の成績にも影響しないことがわかっています。ただし、AMHが異常に低い値に出会った場合、月経周期が乱れてしまうことも多くなりますし、体外受精を行っても良質の受精卵と出会えるまで体外受精回数が多くなることがわかっています。そう考えると、本当にAMHが一般妊娠の影響予後に影響を与えてもおかしくないのではないか?と考えてしまいます。そういう目線から論文を読んでいくと、AMH値と流産の関係を示した報告を見つけました。
非常に面白い観点からの推敲でしたのでご紹介させていただきます。

ポイント:
AMH 0.4ng/mL未満であれば、AMH 1ng/mL以上の女性より自然妊娠した場合の流産リスクが上昇しました。AMHが不妊との関連がないことが一般的な理解であり、流産との関連があるかどうかは今後注視する必要があります。

≪論文紹介≫

Brianna M Lyttle Schumacher, et al. Fertil Steril. 2018 Jun;109(6):1065-1071.e1. doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.01.039.

卵巣予備能の指標であるAMH値と自然妊娠の流産との関連性があるかどうかを調査したプロスペクティブ・コホート研究です。不妊症、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜症の既往がなく、自然妊娠した30歳から44歳の女性(n=533)を対象としました。主要評価項目として自然流産(妊娠20週以前)としました。
結果:
女性年齢、人種、流産歴、BMIを調整したところ、流産のリスクはAMHの増加と共に減少した(AMHの自然対数の単位増加あたりのリスク比 0.83; 95%CI, 0.73-0.94).AMH 0.4 ng/mL以下の女性では、AMH 1 ng/mL以上の女性の2倍以上で流産率が増加しました(ハザード比、2.3;95% CI、1.3-4.3)。

≪私見≫

AMH値は流産リスクと逆相関するという論文は過去にもあります。
 Levi A,et al.Fertil Steril. 2001; 76: 666-669
 Trout S, et al.Fertil Steril. 2000; 74: 335-337
 Elter K, et al.Gynecol Endocrinol. 2005; 21: 33-37
一方、AMHは流産リスクとは関連がないことが示唆されている論文もあります。
 Zarek S, et al. Fertil Steril. 2016; 105: 946-952
 Pereira N, et al. Womens Health. 2016; 12: 185-192
 Pereira N, et al. J Assist Reprod Genet. 2015; 32: 985-990
今回のディスカッションでも触れられていますが、自然妊娠で流産率があがるのは受精卵の質による影響か、内膜因子の影響かはわかっていません。
ホルモンの乱れという観点からはPCOSや肥満女性で生化学妊娠が増えるメカニズムと似ている気もしますし、通常の体外受精のロジックから考えると卵子の質の影響であってもおかしくないなと思ってしまいます。面白いテーマですので当院データでも振り返ってみたいと思います。

文責:川井清考(院長)

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