子宮内膜症/子宮腺筋症女性の子宮収縮(Fertil Steril. 2024)

子宮内膜症や子宮腺筋症のある非妊娠女性における子宮収縮力異常が月経困難症、不妊(精子の移送、着床時期の妨げなど)などの原因と考えられています。子宮蠕動運動については、測定も一貫しておらず、まだ十分な研究がなされていないのが実情です。
子宮内膜症/子宮腺筋症女性の子宮収縮のメタアナリシスをご紹介いたします。質が高い研究がすくなく、不均一な結果ではありますが大凡のイメージをつかみやすい報告となっています。

≪ポイント≫

子宮内膜症または子宮腺筋症の女性では、月経周期のすべての時期にわたって収縮振幅が大きくなりました。子宮収縮頻度は内膜症では高くなっている傾向がありました。

Noemi Salmeri, et al. Fertil Steril. 2024 Dec;122(6):1063-1078. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.07.026.

子宮内膜症および子宮腺筋症女性における月経周期の各相にわたる子宮収縮力に関するエビデンスを検証することを目的としたシステマティックレビュー・メタアナリシスです。PubMed/MEDLINE、Embase、Scopusのデータベースを2024年5月2日まで検索しました。子宮内膜症/子宮腺筋症の女性と対照群で、異なる月経周期期にわたって、MRI、超音波、電気生理学的検査、または直接子宮内圧記録を用いた子宮収縮力の定量的測定を行なった報告を対象とし、研究の質はNewcastle-Ottawa Scaleを用いて評価しました。評価項目は逆行性子宮収縮パターン、すべての月経周期期にわたる子宮収縮力の連続測定値(収縮の頻度、振幅、速度)としました。
結果:
9件の研究が組み入れ基準を満たしました。月経中の逆行性子宮収縮のリスク増加(約9倍)が、対照群と比較して子宮内膜症女性で観察されました(リスク比、8.63;95%CI、3.24-22.95)。子宮内膜症/子宮腺筋症群では、すべての時期で収縮振幅が高いことが報告されました。特に子宮腺筋症についてはデータが少ないため、ほとんどの比較についてエビデンスの確実性は低いと評価されました。内膜症単独でみると、子宮収縮頻度が増加する傾向の結果となりました。
子宮内膜症と対照群の収縮頻度のプールMD
 月経期0.82(95%CI、0.13-1.52)
 排卵前期-0.13(95%CI、-1.75-1.48)
 黄体期0.52(95%CI、0.22-0.83)
子宮内膜症/子宮腺筋症群と対照群の収縮頻度のプールMD
 月経期0.45(95%CI、-0.24-1.15)
 増殖期-0.15(95%CI、-0.29-0.00)
 排卵前期-0.15(95%CI、-0.84-0.54)
 黄体期0.27(95%CI、-0.23-0.77)

≪私見≫

静脈内投与(アトシバン)、皮下投与(バルシバン)、経口投与(ノラシバン)の胚移植成績改善は、コクラン・レビュー2021ではアトシバンだけ若干良いコメントが残されるものの現在の研究では成績改善には疑問点が残るとしています。
Laurentiu Craciunas, et al.Cochrane Database Syst Rev. 2021 Sep 1;9(9):CD012375. doi: 10.1002/14651858.CD012375.pub2.
子宮収縮頻度が増えそうな症例にしぼったRCTなどが増えてくると結論が変わるのでは?というstudy questionは以前からあるので今後の報告に期待したいと思います。
国内では、どの製剤も使用することができないため、ダクチルなどの代替製剤を検討されることがあります。

子宮の蠕動運動は、胚移植の成績に影響するか(論文紹介)
胚移植時のダクチル®️を使う習慣
オキシトシン受容体アンタゴニスト製剤(ノラシバン)の子宮に与える影響(論文紹介その1)
オキシトシン受容体アンタゴニスト製剤(ノラシバン)の子宮に与える影響(論文紹介:その2)
子宮内膜蠕動運動の妊娠への関連(Fertil Steril. 2017)
子宮腺筋症の収縮異常(Fertil Steril. 2024)

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文責:川井清考(院長)

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