子宮腺筋症の収縮異常(Fertil Steril. 2024)
子宮腺筋症は子宮筋層におけるオキシトシン受容体の過剰発現や子宮エストロゲンレベルが上昇により子宮収縮異常が起こっているとされています。これらを月経周期別に超音波画像で評価した報告をご紹介いたします。
≪ポイント≫
子宮腺筋症の収縮異常は、振幅の増加、頻度と速度の低下、収縮協調性の低下とさまざまな因子で認められています。
≪論文紹介≫
Connie O Rees, et al. Fertil Steril. 2024 May;121(5):864-872. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.01.009.
二次元経腟超音波スペックルトラッキング法を用いて、子宮腺筋症患者の子宮収縮力を健常対照群と比較して定量的に評価することを目的とした2014年から2023年に行われた多施設前向き観察研究です。超音波検査またはMRIで子宮腺筋症と診断された女性46名と子宮に病変のないコントロール106名をリクルートしました。4分間の経腟超音波記録を行い、スペックルトラッキングアルゴリズムを用いて4つの子宮収縮力特徴をMatlabを用いて抽出しました。評価項目は収縮頻度(収縮/分)、振幅、速度(mm/s)、および協調性とし、月経周期にあわせて比較検討しました。
結果:
月経周期の各相を通じて、子宮腺筋症患者ではコントロール群と比較して、振幅の増加、頻度と速度の低下、収縮協調性の低下がみられました。これらは卵胞期後期において、振幅の増大(0.087±0.042 vs. 0.050±0.018)、頻度と速度の低下(それぞれ1.49±0.22 vs. 1.68±0.25収縮/分、0.65±0.18 vs. 0.88±0.29mm/s)、収縮協調性の低下(0.34±0.08 vs. 0.26±0.17)を認めました。黄体後期では振幅が大きく(0.050±0.022 vs. 0.035±0.013)、速度が遅く(0.51±0.11 vs. 0.65±0.13mm/s)、収縮協調性が低下しました(0.027±0. 06 vs. 0.18±0.07)。卵胞期中期では、収縮回数が減少しました(1.48±0.21 vs. 1.69±0.16収縮/分)。月経中の疼痛スコアと、頻度および速度の低下、収縮振幅の増大が有意に関連していました。
≪私見≫
体外受精治療成績に子宮収縮抑制薬と使うという考え方は新旧ともに行われています。もう少し系統立った検査・治療戦略に組み込まれることを検討していかないといけないのかもしれませんね。
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オキシトシン受容体アンタゴニスト製剤(ノラシバン)の子宮に与える影響(論文紹介:その2)
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文責:川井清考(院長)
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