妊娠初期流産に中絶薬を用いた場合の結果(国内未承認:Fertil Steril. 2024)
国内でも中絶薬の認可に対する話し合いが徐々に進んでいます。このあと、妊娠初期流産への拡大承認も検討されていく可能性は十分にあります。
海外からの、妊娠初期流産に中絶薬を用いた場合の成功率について報告した論文をご紹介いたします。
≪ポイント≫
妊娠初期流産に中絶薬を用いた対応は、胎嚢の大きさによるが概ね問題なく子宮内容物排出することができそうです。
≪論文紹介≫
Valeria Colleselli-Türtscher, et al. Fertil Steril. 2024 May;121(5):824-831. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.01.011.
ミフェプリストンとミソプロストールを併用したプロトコールによる妊娠初期流産症例において、子宮内容物排出までの成功率を比較し、成功の予測因子、初回子宮内容物排出までの時間、完全に子宮内容物が排出されるまでの時間を評価することを目的としたレトロスペクティブコホート研究です。
2013年6月から2021年7月に妊娠13週未満で妊娠初期流産となり、ミフェプリストン200mg経口投与とミソプロストール800mcg経腟投与による内科的管理が行われた女性を対象としました。自然妊娠患者と体外受精患者にわけて、流産管理の全体的な成功率を評価しました。
結果:
930名の女性が研究に組み入れられ、そのうち99名(11%)が体外受精妊娠でした。薬による治療全体の成功率は89%で、妊娠様式(自然妊娠89% vs.体外受精妊娠 89%)や移植の種類(新鮮89% vs. 凍結89%)による統計的有意差はありませんでした。超音波検査による妊娠週数のみが治療成功の独立した予測因子であり、β=-0.333の負の回帰係数と0.717のオッズ比を示しました。初回子宮内容物排出までの平均時間は5.0±2.1時間でした。全体として、666名の女性(72%)が投薬当日に妊娠の消失を示し、さらに110名の女性が1週間後のフォローアップで、さらに74名の女性が超音波検査で4週間以上後に妊娠の消失を示しました。
≪私見≫
今回の妊娠初期流産に対する中絶薬プロトコールは、外来でミフェプリストン200mgを経口投与し、36~48時間後に入院し、ミソプロストール800mgを経腟投与(膣鏡検査で医師が子宮頸管周囲に留置)。5~6時間後に腟からの出血や組織通過の兆候のない患者には、担当医の判断に基づいてミソプロストール400mgを追加投与しています。
過去のブログでも扱っていますが、流産直後は胚移植成績・妊娠率が低下する可能性は否定できませんが、流産手術手技によるものか、流産自体に子宮内環境変化やホルモン変化によるものかはわかっていません。
~関連ブログ~
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文責:川井清考(院長)
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