生検後1時間の形態変化と出生率(Fertil Steril. 2024)
ESHREは、PGT-A周期において生検後直ちに凍結することを推奨していますが、成績に影響を与える明確な時間はわかっていません。生検後1時間の形態変化が成績にどのように影響するかどうか調査した報告をご紹介いたします。
≪ポイント≫
生検後1時間の形態変化をみたときに再膨張した方が、出生率が高くなっていそうです。
Ibrahim Elkhatib, et al. Fertil Steril. 2024 Dec;122(6):1147-1149. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.07.014.
凍結時(生検後1時間)の胚盤胞再膨張と融解後胚盤胞再膨張の相関、および生児出生率との関連を調べたレトロスペクティブコホート研究です。
2021年4月から2023年2月に単一胚盤胞移植を受けたすべての女性(PGT症例除く)を対象としました。胚盤胞は生検の1時間後に以下のようにスコアリングしました: G0は完全収縮、G1は再膨張開始、G2は再膨張。 融解1時間後の再膨張の評価にも同じ評価基準が用いました。主要評価項目は生児出生率としました。
結果:
937組1,141件の移植のうち、569件(49.8%)が生児出生に至りました。生検後1時間で観察したところ、730個の胚盤胞(64.0%)がG2、334個(29.3%)がG1、77個(6.7%)がG0でした。生検後1時間でG2の良好胚盤胞は、G1/0良好胚盤胞よりも生児出生率が高くなりました(56.2% vs. 48.5% vs. 42.1%;P=.006)。同様に、生検後1時間でG2の形態が一般/不良胚盤胞は、G1/0一般/不良胚盤胞よりも生児出生率が高くなりました(40.7% vs. 33.3% vs. 23.1%;P=.025)。混合効果ロジスティック回帰分析によると、生検後1時間で観察された胚盤胞の再膨張グレードは、生児出生と独立した関連を示しました(aOR 1.77;95%CI 1.01-3.12;G2 vs. G0;P=.047)。生検後の形態評価で調整した後、生検後1時間のG2/1胚盤胞は、G0胚盤胞よりも融解後の再膨張速度も速くなりました。融解1時間後の胚盤胞を観察したところ、65.2%の胚盤胞は生検1時間後の再膨張と同じグレードでしたが、26.4%の胚盤胞は融解後再膨張グレードが生検1時間後の再膨張よりも高く、8.4%の胚盤胞は低下しました。
≪私見≫
融解後の再膨張を含めて以前より議論される話題です。明らかに変性してくる胚をもどさないことは当然として、再膨張が緩慢だった際に戻さないことを考えるのであれば融解後観察するメリットはあるかもしれませんが、そこまで形態変化の観察で成績に大きな開きがないなら観察せず凍結前評価と融解後変性評価だけ的確に行い胚移植を速やかに行う形でよいのではないか?と感じています。
凍結前/融解後グレード変化による移植成績変化(Fertil Steril. 2024)
https://medical.kameda.com/ivf/blog/post_1314.html
凍結胚の移植前日融解による生殖医療成績(Fertil Steril. 2018)
https://medical.kameda.com/ivf/blog/post_1222.html
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文責:川井清考(院長)
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