凍結胚の移植前日融解による生殖医療成績(Fertil Steril. 2018)
胚盤胞の凍結時期を決めるときに進展度合いで4-7日目(通常は5日が多いのですが)に生殖医療施設の基準によって行います。胚盤胞融解の後、通常は当日に胚移植することが多いのですが、凍結胚盤胞も融解後1日程度おいても成績に影響を与えないんじゃない?という趣旨のもと建てられたランダム化比較試験をご紹介いたします。過去の報告(Fang C, et al. Arch Gynecol Obstet 2016;293:1347–56.)では前日融解は問題なしとされていましたがどうなんでしょうか。
≪ポイント≫
5日目良好胚盤胞であれば融解後16-22時間でも生殖医療成績に影響を与えないことがわかりました。
≪論文紹介≫
Charlène Herbemont, et al. Fertil Steril. 2018 Dec;110(7):1290-1297. doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.07.1153.
5日目良好胚盤胞融解後の培養時間(当日 vs. 翌日)が着床率に影響するかどうかを検討したランダム化比較試験です。2015年6月から2017年3月までに実施された5日目胚盤胞移植162症例を対象としました。1)採卵時女性年齢が38歳未満、2)体外受精周期1-2回目、3)胚移植既往5個未満、4)移植胚3BB以上を組入基準としました。移植前日に胚盤胞融解し約18時間(16~22時間の範囲)培養した後、移植する前日群81症例と、胚移植当日に胚盤胞融解し約1時間(30分~5時間の範囲)に移植する当日群81症例に分けて検討しました。
結果:
前日群と当日群の胚盤胞質は同程度でした(≧4AA/AB/BA:前日群 39.1%、当41.7%)。前日群では胚盤胞102個中14個(12.2%)が移植不適、当日群では103個中1個(0.9%)だけでした。移植直前の再膨張度は前日群で高くなり(0.90 vs. 0.70)、移植前孵化胚盤胞率も前日群で高くなりました(38.6% vs. 12.7%)。着床率は同等であり(38.0% vs. 36%)、出生率も同等でした(35.8% vs. 34.6%)。
≪私見≫
胚盤胞融解後半日程度では成績は低下しない。胚の再拡張は良好胚選択の目安だが、短い時間(朝融解の昼移植程度の時間)では評価しきれない。というのが最近の主流のようです。胚盤胞を複数融解することも含めての移植を検討されるのであれば融解後長期培養胚選択も選択肢になりうるかもしれません。
Maezawa T, et al. J Assist Reprod Genet 2014;31:1099–104.
Ahlstrom A, et al. Hum Reprod 2013;28:1199–209.
Shu Y, et al. Fertil Steril 2009;91:401–6.
Kovacic B, et al. Reprod Biomed Online 2018;36:121–9.
Coello A, et al. Fertil Steril 2017;108:659–66.
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文責:川井清考(院長)
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