凍結胚融解後時間による妊娠成績の違い(J Assist Reprod Genet. 2024)

凍結胚融解後時間の生殖医療成績に関しては、臨床現場でも話題にあがります。回復培養をして胚の生存を確認することが大事!と教わってきたと思ったら、回復培養の時間が長すぎると無駄なエネルギーを使うから早く子宮内に戻したほうがよいというアドバイスがあったり、また一日の業務時間の最適化をする上でも、どの時間で凍結胚を融解するのかは大事なポイントとなります。凍結胚融解後時間による妊娠成績の違いを示した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

凍結胚融解後の許容できる時間のばらつきはは流産率や生児出生率に影響を及ぼさないことがわかりました。

≪論文紹介≫

Goli Ardestani, et al. J Assist Reprod Genet. 2024 Apr 20. doi: 10.1007/s10815-024-03115-8.

凍結胚融解後の培養時間のばらつきが胚盤胞の代謝や妊娠転帰に影響を及ぼすかどうかを検証することを目的とした単一施設レトロスペクティブコホート研究です。
2015年1月から2020年12月までの11,520単一凍結融解胚盤胞移植周期の成績を分析しました。胚盤胞融解から胚移植までの時間は8カテゴリー化しました。0(-1時間)、1(1-2時間)、2(2-3時間)、3(3-4時間)、4(4-5時間)、5(5-6時間)、6(6-7時間)、7(7-8時間)。また、廃棄されたヒト胚盤胞の非侵襲的代謝イメージングを最長10時間まで蛍光寿命イメージング顕微鏡(FLIM)を用いて行い、培養中の代謝摂動(Metabolic Perturbation)を調査しました。
結果:
すべての時間カテゴリーにおける患者の平均年齢は同じでした(35.6±3.9歳)。生児出生率(38~52%)および流産率(5~11%)は、凍結胚融解後の培養時間による統計的な差はなかった。PGT-A胚に基づいて妊娠転帰を検討しても同様の結果としました。凍結胚融解後10時間の培養期間における胚盤胞代謝分析でも代謝変化に時間によって大きな変化が現れないことがわかりました。

≪私見≫

一般的に凍結胚盤胞は融解され、1~5時間以内に移植されることが一般的です。
融解後の培養時間を長くすることを提唱する人もいますが、良質の胚盤胞を使用した場合、培養時間が長くても(22時間)、短くても(5時間)、妊娠転帰は同等であるという報告もあります。
 Herbemont C, et al. Fertil Steril. 2018;110(7):1290–7.

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文責:川井清考(院長)

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