2024年米国生殖医学会(ASRM)での演題紹介2(郵送での精液検査、不足するAndrologist)
2024年米国生殖医学会で発表されていて興味深かった演題についてご紹介します。
Fellow社のMail-in semen analysisつまり郵送での精液検査の発表が目立ちました。
国が大きくて、精液検査を受けるために受診するのも大変なのが理由かと思っていましたが、それ以外の理由もあるようです。また、男性の生殖医療を担当する医師が足りない状況であるのは我が国と同様のようです。
いくつかの演題を紹介したいのですが、タイトルと結論のみご紹介します。
前回に続いて4つの演題をご紹介します。
≪研究の紹介≫
4.MAIL-IN SEMEN ANALYSIS: A CONVENIENT AND POTENTIALLY TIME SAVING METHOD OF FERTILITY EVALUATION
David K Charlesほか (University of Virginia)
Fellow Healthの研究者あり
Fertility and SterilityVol. 122Issue 4 Supplement e261–e262 Published in issue: October, 2024. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2024.07.825
タイトル:郵送での精液検査:便利で時間を節約できる可能性のある生殖機能評価法
結論:郵送での精液検査キットにより、患者は自宅で精液サンプルを採取することができます。先行研究では、ラボまでの移動時間が精液検査を完了するための障壁であることが明らかにされています。診療所への移動時間が長い患者にとって、この精液検査キットは、精液検査に必要であった移動の負担を軽減する可能性があります。このことは、患者にとって、仕事を休む時間や全体的な経済的負担を節約し、費用対効果の高い医療サービスが改善されることが推測されます。
5. OVER 90% OF FERTILITY PATIENTS COMPLETE MAIL-IN SEMEN ANALYSIS WITHIN 2 MONTHS
Alisha T Tolani ほか(University of California San Francisco)
Fellow Healthの研究者あり
Fertility and SterilityVol. 122 Issue 4 Supplement e266–e267 Published in issue: October, 2024. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2024.07.838
タイトル:不妊患者の90%以上が2ヶ月以内に郵送での精液分析を完了
結論:82.4%の患者が4週間以内に、98.5%の患者が26週間以内に郵送での精液分析を完了しました。不妊検査のために郵送での精液検査を希望する患者は、検査の入手方法や地理的位置にかかわらず、精液検査を完了する可能性が高い結果でした。
6.MAIL-IN SEMEN ANALYSIS PERFORMED FOLLOWING VASECTOMY REVERSAL IS ASSOCIATED WITH EXCELLENT KIT COMPLETION RATES AND TURNAROUND TIMES INDEPENDENT OF SOCIOECONOMIC BARRIERS
Kian Asanad ほか(Keck Medicine of USC)
Fellow Healthの研究者あり
Fertility and SterilityVol. 122 Issue 4 Supplement e404 Published in issue: October, 2024. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2024.08.227
タイトル:パイプカット後の精管精管吻合術後に行われる郵送での精液分析は、社会経済的な障壁とは無関係に、精液検査完了率および所要時間に関連しています。
結論:パイプカット後の精管精管吻合術後に郵送での精液検査を利用する男性は、キットでの精液検査を完了する可能性が非常に高く、通常キット起動後2週間以内に完了しました。人種、学歴、収入に関係なく、すべての男性が等しく検査を完了する可能性がありました。
7.THE DISTRIBUTION OF FELLOWSHIP TRAINED ANDROLOGISTS IN THE UNITED STATES
Lillian Laiほか (Wayne State Department of Urology)
Fertility and Sterility Vol. 122 Issue 4 Supplement e260–e261 Published in issue: October, 2024. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2024.07.823
タイトル:米国におけるフェローシップ訓練を受けたアンドロロジスト(男性学専門医)の分布
結果:フェローシップ研修を受けたアンドロロジスト* 192 名が特定されました。州レベルでは、18 歳以上の男性人口が最も多いのは、カリフォルニア、テキサス、フロリダです。18 歳以上の男性人口に対するフェローシップ研修を受けたアンドロロジストの割合が最も高かったのは、ロードアイランド (100 万人あたり 4.62 人)、コネチカット (100 万人あたり 3.56 人)、メリーランド/DC (100 万人あたり 3.50 人) でした。18 歳以上の男性人口が合計 750 万人の 11 州には、フェローシップ研修を受けた男性医師がいませんでした。The Federation of State Medical Boardsによると、これらの州の多くには、緊急時以外での遠隔医療へのアクセスを制限する法律があります。
結論:米国全土において、フェローシップ研修を受けたアンドロロジストの分布には大きな差があります。
*アンドロロジスト:生殖医療や性機能に関する医療に専門的に携わっている医師で、通常泌尿器科医師
≪筆者の意見≫
精液検査受けるためには、検査を実施している医療機関を診療時間内に予約して、医療機関まで赴く必要があります。また、米国での状況ではありますが、生殖機能の評価において、精液検査は最後になってしまうことが少なくないようです。さらに、男性側の生殖医療を専門的に行うための訓練を受けた医師が非常に不足していて、住む場所によっては州外に行かなければならないという場合もあります。つまり精液検査をうけるにはとても高いハードルがあると考えられます。
郵送で正確な精液検査をできるFellow Healthの精液検査キットは、これまでに精液検査を受ける際の障壁の多くを解決し、より身近に手軽にできるようにしたのだと思われます。
文責:小宮顕(泌尿器科部長)
亀田メディカルセンターでは男性不妊外来を開設しております。
泌尿器科専門医・指導医、生殖医療専門医の小宮顕部長が担当します。
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