凍結前/融解後グレード変化による移植成績変化(Fertil Steril. 2024)
胚盤胞融解後の再拡張は臨床成績に影響するとされています。
Ahlström A., et al. Hum Reprod. 2013; 28: 1199-1209
Hershko-Klement A., et al. J Clin Med. 2022; 11: 2673
Allen M.J., et al. Assist Reprod Genet. 2022; 39: 417-425
上記の報告では、融解後2-4時間で再拡張を評価しています。
凍結前にシュリンケージメディウムを使うかartificial shrinkageを行っているかによっても異なると思いますし、最近では融解後2時間も待たないで移植することも多いため、臨床現場でどれくらい当てはまるかわかりません。
単一正常胚凍結融解胚移植の凍結前/融解後グレード変化による生殖予後を示した報告をご紹介いたします。
≪ポイント≫
単一正常胚凍結融解胚移植の凍結前/融解後グレード変化は成績に影響を与えそうです。特に再拡張は着床に対する重要な因子です。
≪論文紹介≫
Jiantong Zhang, et al. Fertil Steril. 2024 Aug;122(2):365-372. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.03.016.
単一正常胚凍結融解胚移植周期において、凍結前から融解後までの胚形態変化が胚移植成功率と関連するかどうかを評価することを目的としたレトロスペクティブコホート研究です。2016年9月から2022年4月に、単一倍数体胚移植周期を受けた女性を対象としました。凍結日、凍結保存時および融解後の拡張度合い、ICM、TEグレードにてスコアリングをし、G1群には融解後同じ胚(基準);G2群にはよりスコアが高い胚;G3群にはよりスコアが低い胚;G4群には融解後に再拡張しない胚としました。
主要評価項目は胚移植あたりの生児出生率とし、副次評価項目は生化学的妊娠率、臨床的妊娠率、流産率としました。
結果:
4,613名7,750周期の胚移植を対象としました。単変量解析において、生児出生率はG1群5,331周期、G2群486周期、G3群1,726周期、G4群207周期であり、有意差を認めました(55.8% vs. 51.4% vs. 47.5% vs. 26.6%)。採卵時年齢、AMH、BMI、子宮内膜厚、胚移植実施時期、融解から最終評価までの時間、凍結前の胚スコアでコントロールしたロジスティック回帰では、胚がダウングレードした場合(OR 0.70;CI 0.62-0.79)、または再拡張しなかった場合(OR 0.36;CI 0.26-0.51)は、スコアに変化しなかった場合よりも、生児出産のオッズが有意に低くなりました。流産率には差がありませんでした。
≪私見≫
ガードナースコア、凍結日、融解後の再拡張は正常核型胚の生化学的妊娠・臨床的妊娠・生児出生率(差がついているのは着床するかしないかのようです。)に影響を与えていそうです。融解後再拡張しなくても43%着床すること、そのほかのグレード変化はそこまで成績差につながらないことが面白い結果だと思います。
彼らが提供しているアルゴリズムのスコアリングは以下の通りです。
Jenna Friedenthal, et al. J Assist Reprod Genet. 2021 Jul;38(7):1647-1653. doi: 10.1007/s10815-021-02203-3.
Day 5 / TE A | Day 5 / TE B | Day 5 / TE C | Day 6 / TE A | Day 6 / TE B | Day 6 / TE C | |
ICM A / 拡張度 4 | 4.685638 | 4.659984 | 3.872428 | 3.523036 | 3.4776 | 2.9116 |
ICM B / 拡張度 4 | 3.154872 | 3.106656 | 2.607332 | 2.372084 | 2.3184 | 1.9604 |
ICM C / 拡張度 4 | 1.866788 | 1.8492 | 1.5428 | 1.4036 | 1.38 | 1.16 |
ICM A / 拡張度 5 | 4.443277 | 4.376333 | 3.67213 | 3.34081 | 3.265592 | 2.761 |
ICM B / 拡張度 5 | 2.991689 | 2.917555 | 2.47247 | 2.24939 | 2.17728 | 1.859 |
ICM C / 拡張度 5 | 1.77023 | 1.73664 | 1.463 | 1.331 | 1.296 | 1.1 |
ICM A / 拡張度 6 | 4.039343 | 4.05216 | 3.3383 | 3.0371 | 3.024 | 2.51 |
ICM B / 拡張度 6 | 2.719717 | 2.70144 | 2.2477 | 2.0449 | 2.016 | 1.69 |
ICM C / 拡張度 6 | 1.6093 | 1.608 | 1.33 | 1.21 | 1.2 | 1 |
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文責:川井清考(院長)
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