子宮腔内癒着剥離術後の再癒着予測因子(Fertil Steril. 2024)
子宮腔内癒着剥離術後の再癒着を改善するために、子宮内避妊具(IUD)挿入、子宮内バルーン、術中バリアジェル塗布などが有効とされていますが、それでも再癒着は14%~48%と推定されています。予後因子を検討した報告をご紹介いたします。
≪ポイント≫
子宮腔内癒着剥離術後の再癒着はバリアジェル使用によりやや減少しますが、国内では使用できるジェルは未販売なので、代替方法での対応が検討することが無難です。
≪論文紹介≫
Jiantong Zhang, et al. Fertil Steril. 2024 Aug;122(2):365-372. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.03.016.
子宮腔内癒着剥離術後の子宮腔内再癒着に影響を与える因子を分析した前向き研究です。
2018年6月から2022年6月に子宮鏡検査で子宮腔内癒着と診断された患者292名を対象としました。子宮腔内癒着剥離術を行って2ヶ月後の子宮鏡検査にて子宮腔内再癒着群52名と子宮腔内癒着完治群240名に分けました。臨床データを収集し、さまざまな影響因子と評価しました。
結果:
多因子バイナリー・ロジスティック回帰分析の結果、子宮腔内癒着剥離術5日後に子宮腔内バリアジェルを再塗布することが保護因子でした。対照的に、術前AFSスコア高値は、重度子宮腔内癒着と慢性子宮内膜炎の危険因子であることを示しました。
≪私見≫
今回の手術方法は月経3~7日目に超音波ガイド下に手術を実施。術直後に子宮腔内癒着バリアジェル3mLを注入し、子宮腔内に3~5mLのバルーンチューブを留置、5日後に抜去。一部の患者では、バルーンチューブを抜去する際に3mLの子宮内癒着バリアジェルを再注入しています。16Frのフォーリーカテーテルによる最初の子宮内バルーン拡張術は術後10日に行い、子宮鏡検査は術後20日に行っています。子宮内膜修復を促進するため、術直後にエストロゲン・プロゲステロンの適宜行っています。
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文責:川井清考(院長)
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