子宮腔内癒着予防にヒアルロン酸ゲル(Am J Obstet Gynecol. 2024)

子宮手術の際に術後の癒着はいつも気になるところではあります。
海外で使用されているヒアルロン酸ゲルの癒着再発への効能を調査した総説をご紹介いたします。

≪ポイント≫

ヒアルロン酸は子宮手術術後の子宮内癒着発生率を安全かつ効果的に減少させ、不妊治療成績を改善する可能性があります。国内でも同様の手術資材がでてくることを期待します。

≪論文紹介≫

Yan Luo, et al. Am J Obstet Gynecol. 2024 Jul;231(1):36-50.35. doi: 10.1016/j.ajog.2023.12.039.

子宮内手術後の子宮内癒着予防と妊孕性改善に対するヒアルロン酸ゲルの有効性と安全性を明らかにすることを目的としたRCTを対象としたメタアナリシスです。PubMed、EMBASE、Cochrane Library、Web of science、ClinicalTrials.govを2023年11月1日まで検索しています。
結果:
2,539名の患者を含む16のランダム化比較試験のデータが抽出され、解析されています。ヒアルロン酸は中等度から重度の子宮内癒着の発生率を減少させ(RR 0.53;95%CI、0.42-0.67;I2=48%)、妊娠率を改善しました(RR 1.24;95%CI、1.02-1.50;I2=0%)。子宮内癒着の発生率に対するヒアルロン酸の効果に影響する因子を評価するために、サブグループ解析が行いました。ヒアルロン酸の量にかかわらず子宮内癒着発生率を減少させることがわかりました。また子宮内手術の術式(子宮鏡下癒着溶解術、子宮鏡下筋腫核出術および中隔切除術、D&C)問わず、効果があることがわかりました。保護効果は6~12週間の経過観察で統計的に有意となっています。子宮内手術後の軽度の子宮内癒着発生率、妊娠率、生児出生率、流産率に対するヒアルロン酸の効果は、結論が明確ではなく追加臨床試験が必要そうであることがわかりました。

≪私見≫

ヒアルロン酸はフィブリン付着と癒着を避ける機械的バリアとして働くだけでなく、抗炎症および線溶能も持っています。ヒアルロン酸は炎症反応を抑制し、血管新生プロセスを促進することにより、癒着の発生を減少させる可能性が考えられています。

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文責:川井清考(院長)

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