性別を選べたら正常胚移植は品質と性別どちらを優先?(J Assist Reprod Genet. 2024)

性別を選べたら胚移植の時に、品質と性別どちらを優先するんだろう?という疑問は日々考えることがあります。人種や民族、社会経済的地位、第一子の性別、時代・国の生殖ガイドラインなど様々なバイアスが存在するとありそうです。
国内では性別を選んだ胚移植はできませんが、米国で行われた調査を見つけたのでご紹介したいと思います。

≪ポイント≫

性別を選べたら胚移植の時に、品質を選ぶ人がやや多く、性別を選ぶ場合は男性胚を選ぶ人がやや多いことがわかりました。正常胚であれば、品質と性別どちらを希望しても成績はかわりませんでした。
(国内では性別選択不可)

≪論文紹介≫

Pavan Gill, et al. J Assist Reprod Genet. 2024 Jun 24. doi: 10.1007/s10815-024-03162-1.

2012年1月から2021年12月に米国単一医療施設で実施されたレトロスペクティブコホート研究です。体外受精の保険適用が義務付けられている米国でも数少ない州の一つであるニュージャージー州で行われました。正常核型胚を獲得できた患者を対象としています。主要評価項目は、胚選択嗜好性(品質で選ぶか、性別で選ぶか)としました。10年間の傾向を評価し、臨床的妊娠率、妊娠継続率、生児出生率などの臨床転帰を比較しました。
結果:
54.5%が最も品質が良い胚を選択し、45.5%が性別を選択しました。性別を選択した患者のうち、56.5%が男性胚を選択し、43.5%が女性胚を選択しました。品質に対する嗜好は10年間一貫しており(p = 0.30)、男性胚を選ぶ嗜好も一貫して好まれていました(p = 0.64)。臨床転帰は、グループ間(臨床的妊娠率:74.4% vs. 71.9%、p = 0.05、妊娠継続率:64.9% vs. 63.4%、p = 0.26、生児出生率:58.8% vs. 56.7%、p = 0.13)で差がなく、男性胚選択と女性胚選択でも同様に差がありませんでした。

≪私見≫

正常胚だと思えば、たしかに半数近くの方が性別を選んで胚移植を希望する気持ちがわからなくもありません。ただ、第一子希望の場合、性別はどちらを選ぶかはご夫婦のどのような意思決定で行われているのか興味深いところです。

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文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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