セリアック病は卵巣予備能が低下する(J Assist Reprod Genet. 2024)

セリアック病は小麦などに含まれるグルテンにより引き起こされる自己免疫疾患です。十二指腸や空腸を中心とした慢性炎症により、下痢や腹痛などの消化器症状や、貧血、疱疹状皮膚炎、骨粗鬆症など、吸収不良に関連する合併症を含む腸管外症状、抑うつなど精神疾患など多彩な症状を引き起こします。欧米諸国では有病率が1 %程度であり、日本では0.05%程度であるとされています。
セリアック病は、生殖関連疾患の有病率が1.10~1.54%と報告されていて、性腺機能低下、無月経、不妊、反復流産などを示すことがあります。栄養吸収不足によるもので起こる可能性、自己免疫により起こる可能性など様々考えられていて、今回、こちらを調査した横断研究が報告されましたのでご紹介いたします。

≪ポイント≫

セリアック病女性では、卵巣予備能低下は疾患の重症度および栄養レベルと関連していることがわかりました。

≪論文紹介≫

Ailifeire Tuerxuntayi, et al. J Assist Reprod Genet. 2024 Jun 22. doi: 10.1007/s10815-024-03161-2.

セリアック病女性における血清AMH値、女性ホルモン、黄体ホルモン、卵胞刺激ホルモン/黄体形成ホルモン比、および臨床的特徴や栄養素レベルとの相関を調べることを目的としました。2016年9月から2024年1月にセリアック病と診断された女性67名と、健康な女性67名から臨床的および生化学的データを収集した横断研究です。
結果:
セリアック病女性67名と対照群67名の平均年齢は36.7±7.6歳でした。平均年齢、BMI、FSH、LH、E2、P4、FSH/LH、月経不順、流産歴、分娩数、妊娠率において、両群間に統計学的有意差は認められませんでした。しかし、血清AMH、テストステロン、フェリチン、葉酸、亜鉛、セレニウム値はセリアック病群で有意に低く、PRL値はセリアック病群で高くなりました(すべてP<0.05)。Spearman相関分析によると、AMH値は年齢、tTG(組織トランスグルタミナーゼ)値、罹病期間、Marsh分類重症度と負の相関を示しました(P<0.05)。

≪私見≫

セリアック病が、どのようなメカニズムで妊孕能に影響があるかどうかはわかっていません。セリアック病も自己免疫疾患ですし、早発卵巣機能不全患者の30%は自己免疫疾患も有しているとされていますので免疫機序かもわかりませんし、栄養吸収不良によるものかもしれません。
発症頻度が低い疾患と生殖医療との関わりは、外来等では「わからないので、担当医に聞いて」と説明が疎かになりがちです。わかっていないことも多いですが、ひとつひとつの病態に向き合っていけたらと思っています。

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文責:川井清考(院長)

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