日本から男性妊活用抗酸化サプリメントの最新エビデンスです
≪研究の紹介≫
Micronutrient Antioxidants for Men (Menevit®) Improve Sperm Function by Reducing Oxidative Stress, Resulting in Improved Assisted Reproductive Technology Outcomes
男性用抗酸化サプリメント(Menevit®)が酸化ストレスを軽減して精子機能を改善し、生殖補助医療の成績を改善
Ogawa S. et al., Antioxidants 2024, 13, 635. https://doi.org/10.3390/antiox13060635
男性妊活用のサプリメントはたくさん出ています。男性不妊症診療における抗酸化サプリメントの有用性についての研究は我が国からもいくつか出ていますが、またあらたに出てきました。製薬会社が出しているメネビットという製品をつかった研究です。すでによく患者さんに勧めているものですが、このような研究結果がでると臨床の場には役に立ちます。
要旨:
研究の背景)
酸化ストレス(OS)は男性の健康に影響を及ぼし、精子形成の障害となります。抗酸化サプリメントは、男性不妊症の補完的サポートとして利用可能ですが、その有効性についての結論は出ていません。この研究の目的は、抗酸化サプリメントが精子OSを減少させ、精液検査所見と精液の質を改善するのに役立つかどうかを調べることです。
対象と方法)
生殖補助医療(ART)を予定しているカップルの男性パートナー171人を対象としました。妊娠を目指しているカップルの29~41歳の男性パートナーを対象に、葉酸と亜鉛を含む抗酸化サプリメント(メネビット; リコピン6mg、ビタミンE30mg、ビタミンB6 1.3mg、ビタミンB12 2.4μg、ビタミンC 180mg、亜鉛12mg、セレン60μg、葉酸400μg、L-カルニチン50mg)を毎日摂取する群(n=84)と、6ヵ月間摂取しない群(n=52)が参加者の希望により選択されました。3ヵ月後と6ヵ月後の血清中の酸化物質レベル、精液検査のパラメータ、OS、精子DNA断片化の変化を分析しました。さらに、6ヵ月後に行った胚移植後の着床率、臨床妊娠率、流産率を、抗酸化サプリメントを摂取した群と摂取しなかった群で比較しました。
結果)
酸化還元電位(sORP)が高い男性では、精子濃度とsORPの有意な改善が観察されました。良好胚盤胞到達率は増加する傾向にあり、着床率と臨床妊娠率も6ヵ月間の介入後に有意に増加しました。
結論)
抗酸化サプリメントは、OSを減少させることによって精子の機能を改善し、ARTの結果を改善する可能性があります。したがって、抗酸化サプリメントは、男性不妊症に対する有効な治療選択肢となるものです。
≪筆者の意見≫
男性不妊症診療における抗酸化サプリメントは妊娠率や生児獲得に対して効果がある可能性が指摘されていますが、つよいエビデンスはありません。この研究も無作為化試験ではなく、対照群の方が精液所見が良いのですが、メネビットを使用した酸化還元電位の高い症例では妊娠率が有意に良好でした。
やはりほかの我が国の研究でも(Yamasaki, 2022)でも酸化ストレスが高い症例で抗酸化サプリメント(ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10、亜麻仁油)のメリットがあり精子濃度が上昇していました。今回の研究結果は同様の結果に加えて、ARTの成績改善効果も示され素晴らしいと思います。
ひきつづきメネビットを男性妊活中の方にお勧めしていきます。
また、酸化還元電位測定をする意義にもなると思います。
文責:小宮顕(泌尿器科部長)
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泌尿器科専門医・指導医、生殖医療専門医の小宮顕部長が担当します。
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