子宮内膜蠕動運動の妊娠への関連(Fertil Steril. 2017)

子宮内膜蠕動運動は排卵前に多く、排卵後に減少(Ijlandら, 1997、Bullettiら, 2000)。プロゲステロンにより抑制(Fanchinら, 1998、Muellerら, 2006、Zhuら, 2012)することがわかっています。
子宮内膜蠕動運動は妊娠成績に関係しないという報告もありますが、胚移植時に多すぎるのは医療成績に影響を与えるのでは?と考えてしまいます。
以前取り上げた報告では、胚移植直前に成績に影響する子宮内膜蠕動運動回数は3回/分カットオフでした。
子宮の蠕動運動は、胚移植の成績に影響するか(論文紹介)
人工授精時の子宮内膜蠕動運動自体も妊娠に影響を与えるかどうか調査した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

人工授精トリガー日子宮内膜蠕動運動亢進も妊娠に影響を与えている可能性が否定できません。

≪論文紹介≫

Nelly Swierkowski-Blanchard, et al. Fertil Steril. 2017 Apr;107(4):961-968.e3. doi: 10.1016/j.fertnstert.2017.02.002.

2011年4月から2013年7月に人工授精をおこなうボランティア女性100名に対して経腟超音波検査でのボランティア女性で、IUI前の超音波検査で子宮収縮頻度、子宮内膜厚および体積、子宮内膜下の血流を評価しました。
評価項目を妊娠継続とし、他のパラメータをあわせて妊娠予測に影響するかどうか調査しました。
結果:
妊娠女性では、子宮筋層の弾性指数は有意に高く(2.4±1.3 vs. 1.5±0.7子宮筋層が硬い)、子宮内膜では低くなりました。関連因子は、女性年齢、妊娠既往、卵胞初期検査、人工授精注入精子数、子宮内膜厚、子宮収縮数であった。多変量解析において、子宮収縮頻度が低いこと(<2.8回/分;OR=0.039)、弾性指数が高いこと(>1.7;OR = 63.26)、トリガー日子宮内膜厚が厚いこと(>8mm;OR = 28.21)、若齢女性(<32歳;OR = 0.001)が人工授精妊娠予測因子でした。

≪私見≫

子宮収縮は長い時間超音波を行わないといけないので、患者様の負担は大きい検査です。スクリーニングとして行うのはエビデンスをみても時期尚早だとおもいますが、普段より原因不明不妊患者の原因の一つとして考えてもよいかもしれません。カットオフは2.5-3回/minが主流な印象をうけます。トリガー日もしくは黄体中期どちらが検査として適しているかまだまだ不明な点も数多くあります。

胚移植時のダクチル®️を使う習慣

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文責:川井清考(院長)

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