子宮内膜着床能の超音波評価(Front Med (Lausanne). 2024)

子宮内膜の超音波検査は、着床能を見る際の大事な指標だと考えられています。
一般的なのは内膜の厚みやtriplet lineですが、それ以外にも複数の項目があり生殖医療成績への影響に関してはばらつきがあります。ただ、内膜の見え方として「良い内膜だな、微妙だな」となんとなく感じることは少なくなく、総合的に評価する指標が今までありませんでした。子宮内膜超音波検査でわかる複数項目をスコアリングして生殖医療成績との関連をみた研究をご紹介いたします。

≪ポイント≫

移植日の子宮内膜超音波検査でわかる複数項目をスコアリングすることにより着床能評価ができる可能性が示唆されました。

≪論文紹介≫

Yan Ouyang, et al. Front Med (Lausanne). 2024 Mar 21:11:1354363. doi: 10.3389/fmed.2024.1354363.

2019年4月から2021年7月に初回凍結融解胚移植周期を受けた女性を対象としました。移植当日に経膣3D超音波検査を行い、子宮内膜の厚さ、形態、体積、動き、血流、フローインデックスなどの子宮内膜を評価しました。臨床的妊娠率を主要評価項目としました。
結果:
197名の初回凍結融解胚移植周期女性(139名が妊娠、70.5%)を分析対象としました。今回の症例では、臨床的妊娠のサポート因子として、原発性不妊症(aOR 1.98;95%CI 1.01-3.882;p=0.047] 2回/min以上の子宮内膜蠕動運動(aOR 1.33;95%CI 1.028-1.722;p=0.03)でした。さまざまな超音波指標と臨床的妊娠率との関係に従って、0.1.2点でスコアリングしER scoreをつけました。ER scoreは6項目のスコアの合計としました。妊娠群のER scoreは非妊娠群より有意に高くなりました(7.40±1.73 vs. 6.33±1.99、p = 0.001)。臨床的妊娠率はER scoreの増加とともに増加しました。ER score<6の臨床的妊娠率はER score>6より有意に低くなりました(45.5% vs 75.6%、p=0.001)。

≪私見≫

この論文では子宮内膜蠕動運動は2回/min以上が妊娠していたが、過去の報告では①静的な方がよい②蠕動運動回数は成績に寄与しない、と様々な意見があります。回数だけではなく向きなども加味して評価しないと1項目だけで判断するのはリスクが高そうで今回のER scoreは血流評価や内膜ボリューム評価が複数含まれていて面白い着眼点だなと感じています。
ここに子宮放射状動脈RIなどがはいってくるのでしょうか。

静的な方がよい
・Ijland MM, et al.Fertil Steril. 1996. doi: 10.1016/s0015-0282(16)58207-7
・Swierkowski-Blanchard N, et al. Fertil Steril. 2017. doi: 10.1016/j.fertnstert.2017.02.002

蠕動運動回数は成績に寄与しない
・Chung CHS, et al. Reprod Biomed Online. 2017.doi: 10.1016/j.rbmo.2016.12.011)

ER scoreのスコアリングは以下のとおりです。
子宮内膜形態
 A型 0点 B型 1点 C型 2点
子宮内膜血流
 I 0 点 II 1点 III 2点
子宮内膜の厚さ
 <9 mm 0点9-14 mm 2点 >14 mm 1点
子宮内膜量
 ≤2 mL以下 0点 >2 mL 2点
子宮内膜フローインデックス(FI)
 <26 0点26-31 1点 >31 2点
子宮内膜蠕動の頻度
 <1 0点 1-2 1点 >2 2点

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文責:川井清考(院長)

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