AMHが変動する年齢以外の因子は?

AMHは、いつ測っても同じような測定結果になるという風に説明を受けることが多くあります。ただ、状況によってAMHに影響を与える因子がないわけではありません。患者様からよく質問を受ける内容の1つですのでブログにしました。
先に簡単にまとめておきます。

  • 月経周期による変動は少しあり、排卵期は少し低く出る可能性があります。
  • ピルを内服していると、やや低く出る可能性があります。
  • BMIとの関係ははっきりしていませんがPCOSがある女性が減量するとAMHがさがる傾向があります。
  • 民族差・人種差もあります。

●月経周期による影響

定期的に月経のある30-40歳の健康な女性20名(BMI 24.5-26.5kg/m2)の AMHを毎日測定した結果を示しました。AMH濃度は卵胞期中期に増加、排卵前後に減少、黄体期中期に増加の傾向を示しましたが、AMH濃度が高い群でしか差がとらえられず、低い群では差がほとんどみられませんでした。
同様の傾向は18-44歳の259名の女性を対象に、月経周期中に1回(n = 9)または2回(n = 250)AMHを測定した前向きコホート研究でも報告されています。
John F Randolph Jr, et al. Hum Reprod. 2014. DOI: 10.1093/humrep/det447
K A Kissell, et al. Hum Reprod. 2014. DOI: 10.1093/humrep/deu142

●ピルによる影響

やや、AMHは低くでる傾向があると思います。以前ブログにまとめていますので参考になさってください。
経口避妊薬(OC/ピル)を使用しているとAMHは低下しますか?

●BMIとの関係

まだまだ結論がでていませんが、BMIを直接関係するというより、PCOSにともなう変動の方が主かもしれません。
13-16歳の女性を対象とした研究ですが、PCOSがある肥満女性は減量するとAMHが下がりますが、PCOSがないと減量してもAMHが下がらないという報告があります。
Thomas Reinehr, et al. Clin Endocrinol (Oxf). 2017. DOI: 10.1111/cen.13358

また18-40歳までのPCOS女性38名と非PCOS女性38名を対象に、AMH、AMHR-II、AR mRNA値を卵丘細胞で定量的RT-PCRによって検討した報告ではAMHおよびAMHR-IIの発現はBMIと負の相関を示し、AR発現はBMIと正の相関を示したとされています。
Mohammad Nouri, et al.  Clin Endocrinol (Oxf). 2017. DOI: 10.1111/cen.13098

●民族間による影響

AMHは人種間で差があるという報告があります。アジア系、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック系、インド系アメリカ人は、白人/白人の基準集団と比較して、ART後の出産率(LBR)が低く、流産率が高いことが示されています。
もともとの遺伝学的な違いもあるかもしれませんが、食生活や民族間の風習によるものも影響すると言われています。
そのなかの一番特徴的なのはイスラム教の着衣の影響です。
アラビア半島出身の19-50歳の女性2,495人を対象に、レトロスペクティブな大規模研究を行ったところ、低い卵巣予備能の割合が大いに高くなりました。イスラム教女性のヒジャブ・ニカブの着用によるものかもしれないとしています。ちなみに肌を覆う部分が少ないヒジャブ群はニカブ群に比べてAMHが高い傾向にありました。
Laura Melado, et al. Front Endocrinol (Lausanne). 2021 doi: 10.3389/fendo.2021.735116

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

亀田IVFクリニック幕張