レコベル®皮下注ペンのRCTにおける周産期予後(論文紹介)

世界初のヒト由来細胞株をもとに作成した新規リコンビナントFSH製剤 レコベル®皮下注ペンが国内でも販売されはじめています。同薬剤(フォリトロピンデルタ)による卵巣刺激からの周産期・新生児の転機をゴナールエフ®皮下注ペン(フォリトロピンアルファ)と比較試験を行った結果をご紹介いたします。

≪論文紹介≫

Jon Havelock et al. J Assist Reprod Genet. 2021. DOI: 10.1007/s10815-021-02271-5

欧州および北米・南米の37の治験実施施設で2013年10月から2017年1月に実施されたフォリトロピンデルタの開発プログラムにおける2つの対照臨床試験のデータを用いて行われた無作為化対照評価者盲検試験であるEvidence-based Stimulation Trial with Human rFSH in Europe and Rest of World 1:ESTHER-1(NCT01956110)およびESTHER-2(NCT01956123)試験において、最大3回FSHアンタゴニスト法を行った1,326人2,719周期の新鮮/凍結融解胚移植周期の結果をフォリトロピンデルタ群1,012周期/341周期、フォリトロピンアルファ群1,015周期/351周期で比較しました。対象患者1,326人のうち、513人が2回目卵巣刺激を、188人が3回目卵巣刺激を行いました。
結果:
累計生児獲得率はフォリトロピンデルタ群60.3%、フォリトロピンアルファ群60.7%(-0.2%[95% CI: -5.4%; 5.0%)であり、各治療群での相対寄与率は新鮮胚移植周期が72.8%、凍結融解胚移植周期が27.2%でした。周期あたりの新鮮胚移植の妊娠継続率はフォリトロピンデルタ群32.1%、フォリトロピンアルファ群32.1%、凍結融解胚移植周期ではそれぞれ27.6%、27.8%でした。出産後4週までの新生児の先天異常は,フォリトロピンデルタ群1.6%,フォリトロピンアルファ群1.8%でした(-0.2%[95%CI: -1.9;1.5])。

≪私見≫

レコベル®皮下注ペンは今までのFSH製剤同様の有効性・安全性を確保した薬剤であることがわかります。当薬剤の日本における治験は当院も参加しました。患者様にとって薬剤の合う、合わないがありますので、選択肢が増えることはよいことだと考えています。当院でも2022年4月より導入しており、対象患者さまを選択し適宜使用を行っています。
この論文の対象女性は女性年齢 33.4 ± 3.9歳、BMI  23.7 ± 3.4、AFC 14.7 ± 6.9、不妊期間35.3 ± 24.4ヶ月、原発性不妊 70.7%となっています。両方の薬剤での先天性異常は15名(10名:一箇所の奇形、5名:多発奇形)であり、最も多く報告された先天性異常は、心臓および血管の障害、ならびに腎臓および尿路の障害でした。

新しい薬剤を導入するときには、卒業したあとの予後まで把握し管理する必要があると思っています。先天異常率は決して高い数字ではないので安心して使用していこうと思います。

文責:川井清考(院長)

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