PCOS女性の凍結融解胚移植妊娠予後(Fertil Steril. 2024)
PCOS有病率は約6%~20%とされていて、生殖年齢女性における最も一般的な内分泌および代謝性疾患です。PCOS女性は、自然妊娠か生殖補助医療による妊娠かを問わず、流産、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、子癇前症、早産などの周産期合併症が高いとされています。今回、PCOS女性の凍結融解胚移植妊娠予後を調査したPSMをご紹介いたします。
≪ポイント≫
PCOS女性の凍結融解胚移植妊娠では周産期合併症リスク(妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、前期破水、子宮頸管長短縮症、早産、LGA、低出生体重児など)がやや増加しそうです。
Reweiguli Aihaiti, et al. Fertil Steril. 2024 Dec;122(6):1055-1062. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.07.017.
PCOSが凍結融解胚移植において、妊娠および出産の予後に悪影響を及ぼすかどうかを調査することを目的としたレトロスペクティブコホート研究です。PCOS群は傾向スコアマッチングを用いて対照群と1:2の割合でマッチさせました。2015年1月から2022年12月に凍結融解胚移植を受けた20~40歳の患者2955人を対象に妊娠合併症について評価しました。
結果:
PCOSの女性は妊娠糖尿病(24.9% vs. 16.4%; RR、1.51; 95%CI、1.26–1.82; P<.001)、妊娠高血圧(12.2% vs. 8.9%; RR、1.37;95%CI、1.05~1.80;P=0.022)、早産前期破水(7.0%vs. 3.6%;RR、1.92;95%CI、1.29~2.86;P=0.00 1)、子宮頸管長短縮(1.8% vs. 0.4%; RR, 8.39; 95% CI, 1.56–12.49; P=.002)、LGA児(17.4% vs. 13.7%; RR, 1.27; 95% CI, 1.02–1.57; P=.032)、および低出生体重(19.9% vs. 16.0%; RR, 1.25; 95% CI, 1.02–1.52; P=.030)が、傾向スコアマッチング分析で認められました。単胎妊娠において37週未満の早産リスクが高く(10.5% vs. 6.6%; RR, 1.59; 95% CI, 1.12–2.26; P=.009)。高アンドロゲン症をもつPCOS患者では、関連する交絡因子を調整した後、子宮頸管長短縮の発生率がより高くなりました(5.5% vs. 0.5%; aOR、15.62; 95% CI、2.25–108.48; P=.005)。
≪私見≫
今回の報告もそうですが、PCOSの炎症・高アンドロゲン状態が周産期予後を悪化させると考えているようです。今回の報告ふくめてPCOS女性から出産した児の先天奇形リスクは上昇しないというのが一般的(M. Qiu, et al.Reprod Biomed Online, 2022、J. Lin, et al. Fertil Steril, 2021)で、オーストラリアからの報告で軽度上昇(6.3% vs. 4.9%)するという報告がありますが、糖尿病、母親の肥満、不妊、妊娠中の薬物使用などが考えられると示唆しています(D.A. Doherty, et al. Obstet Gynecol, 2015)。
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文責:川井清考(院長)
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