術後ホルモン療法なしの子宮内膜症再発率(Fertil Steril. 2024)
子宮内膜症手術治療を受けた女性に対して、再発率は術後ホルモン療法を行った場合の方が良好な結果が得られています。手術治療後12ヶ月後再発率は17%から3~9%に減少したという報告、24ヶ月後再発率は25%から6~14%に減少したという報告があります。
ただし、術後ホルモン治療は、女性が妊娠を望んでいる場合や、ホルモン療法薬の副作用やその他の理由で服用できない、あるいは服用したくない場合など、常におこなえるわけではありません。術後ホルモン療法なしの子宮内膜症再発率を調査したメタアナリシスをご紹介いたします。
≪ポイント≫
術後ホルモン療法なしの子宮内膜症再発率は最大27%と予想されます。
Veerle B Veth, et al. Fertil Steril. 2024 Dec;122(6):1079-1093. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.07.033.
術後ホルモン療法を行わなかった外科的治療を受けた後の子宮内膜症の再発率を調査するシステマティックレビュー・メタアナリシスです。MEDLINE、Embase、Cochrane libraryを2023年5月まで検索しました。研究デザインについては、ランダム化比較試験、コホート研究、レトロスペクティブ研究に区別しました。バイアスのリスク評価には、Cochrane Handbook for Systematic Reviews of InterventionsおよびRisk of Bias in Non-randomized Studies of Interventions評価ツールを用いました。
結果:
5367件の記事をスクリーニングし、そのうち97件をレビューし、55件(12件RCT、11件前向きコホート研究、32件後ろ向き研究)を本系統的レビューに回しました。
3、6、12、24ヶ月の追跡期間におけるメタアナリシスでは、23件のデータから再発率はそれぞれ4%、14%、17%、27%でした。
9件RCTはバイアスリスクが低かったですが、非RCTではバイアスリスクが低い研究はわずか3件でした。
≪私見≫
子宮内膜症嚢胞の外科的治療の場合、嚢胞切除術が推奨される。レーザー蒸散術や焼灼術と比較して、痛みの緩和と再発率の低下が期待できるためである。ただし、再発率や卵巣予備能低下に関しては別事象として議論しないといけまけん。
今回の検討では、外科治療別の再発率まで議論されていませんが、不妊治療中に術後ホルモン療法が行えない患者様に説明するにはわかりやすい報告だなと感じています。
子宮内膜症手術の国内取り扱い規約での不妊治療における位置づけ
子宮内膜症の不妊治療の流れ(取扱い規約2021より)
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文責:川井清考(院長)
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