ピル(OCP)・プロゲスチン製剤・子宮内避妊器具のAMHへの影響(Fertil Steril. 2023)
ピルを服用している女性(OCP/LEP/プロゲスチン製剤など)によるAMHの一過性の低下は複数報告されていて、この状況は視床下部・下垂体の排卵抑制作用と一致します。つまり、抑制効果が弱いプロゲスチン製剤やホルモン性子宮内避妊器具(ミレーナなど)など視床下部・下垂体の排卵抑制作用が弱い場合はAMHの一過性の低下も少ない可能性が考えられています。
ピル(OCP)・プロゲスチン製剤・子宮内避妊器具のAMHへの影響を調査した報告をご紹介いたします。
≪ポイント≫
AMH値は、経口エストロゲン・プロゲスチン製剤など性ホルモン剤を内服している女性では内服していない女性に比べて低く出る傾向を認めました。子宮内避妊器具の影響はそれほど強く認めませんでした。ピルなどを内服した状態でのAMHの測定・解釈には注意をはらう必要があります。
≪論文紹介≫
Scott M Nelson, et al. Fertil Steril. 2023 Jun;119(6):1069-1077. doi: 10.1016 / j.fertnstert. 2023.02.019.
2018年5月から2021年11月にAMH検査を実施した米国在住の生殖年齢女性(21-45歳、月経周期21-35日)を対象としたOC/LEPとAMHの関係を調査した前向きコホートの横断研究です。AMH測定時点で、経口エストロゲン・プロゲスチン製剤[n=6,850]、経口プロゲスチン製剤[n=465]、ホルモン性子宮内避妊器具[n=4,867]、銅製子宮内避妊器具[n=1,268]、インプラント[n=834]、膣リング[n=886])と月経周期が規則的な女性(n=27,514)を対象としました。評価項目として、年齢別の避妊器具もしくは薬剤特定的な推定値としました。
結果:
効果推定値は経口エストロゲン・プロゲスチン製剤(0.83; 95%CI, 0.82-0.85)(17%低下)と低下が一番大きく、ホルモン性子宮内避妊器具(1.00; 95%CI, 0.98-1.03)は差がありませんでした。女性年齢によるAMHの抑制効果の差は見られませんでした。AMHパーセンタイルによって避妊法の抑制効果に差があり、パーセンタイルが低いほど効果が大きく、パーセンタイルが高いほど効果が小さかった。例えば、経口エストロゲン・プロゲスチン製剤を服用している女性では、AMH値は10パーセンタイルで32%低く(係数、0.68;95%CI、0.65-0.71)、50パーセンタイルで19%低く(係数、0.81;95%CI、0.79-0.84)、90パーセンタイルで5%低く(係数、0.95;95%CI、0.92-0.98)、他の避妊法でも同様の不一致がみとめました。
≪私見≫
卵胞径5-8mmが血清AMH値に最も大きく寄与し(約60%)、>8mmの卵胞(15%-20%)、<5mmの卵胞(20%-25%)の寄与は小さいとされています。
Jeppesen JV, et al. Mol Hum Reprod 2013;19:519–27.
AMHを治療判断として扱うには、ある程度の専門的な知識が必要だと感じています。
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文責:川井清考(院長)
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