卵子凍結に対するアンケート:アメリカ女子医学生(J Assist Reprod Genet. 2023)

計画的なノンメディカル卵子凍存は、女性の平等な雇用・キャリア形成を含めて社会参加を促進し、経済的・育児環境に安定した段階での家族計画を建てられることから支持されてきています。その反面、妊娠・出産時期を遅らせる危険性、商業的・政策的な側面が強いと医療行為としては賛成しかねると反対する意見も少なくありません。
時代背景・生活している環境に大きく左右される可能性がありますが、これから修練含めて長く技術・知識習得まで期間がかかる女子医学生にノンメディカル卵子凍結に対してのアンケートを行った結果(アメリカの都市部ではない大学)をご紹介いたします。

≪ポイント≫

ノンメディカル卵子凍結について認知度は高まっていますが、妊娠成績や費用対効果などについては理解・認識がおいついていないことがわかりました。ただし、これからキャリア形成に時間がかかる女子学生にとっては、ノンメディカル卵子凍結は検討される選択になってきていることがわかります。

≪論文紹介≫

Austin G Armstrong, et al. J Assist Reprod Genet. 2023 Jun;40(6):1305-1311.  doi: 10.1007/s10815-023-02845-5.

2018年7月から9月にカンザス大学の女子医学生873名にノンメディカル卵子凍結にたいして横断的ウェブ調査研究を行いました。自己申告制で、人口統計学、卵子凍結保存に関する知識、卵子凍結保存の利用に影響を及ぼすであろう因子や態度について、さまざまな多肢選択式の質問を通して調査しました。
結果:
122名(30%)の女性の回答が集まりました。過半数の女子医学生がノンメディカル卵子凍結について知っていたが、卵子凍結の妊娠・出産率と費用対効果、また女性の生殖能力の年齢による低下を正しく理解している女子医学生は半数以下でした。
4人中3人が職業修練により妊娠・出産を遅らせるプレッシャーを感じており、3人中2人がノンメディカル卵子凍結を検討すると回答しました。

≪私見≫

過去にも同じような調査は複数されています。
ノンメディカル卵子凍結の実施を検討すると回答した人の大多数は、意思決定の影響を及ぼす因子として、「金銭的負担」、「妊娠・出産の可能性」、「治療の困難さ」、「男性パートナーの不在」、「子供を持ちたいという願望」、「子供が生まれた時の健康状態」、「生殖医療施設へのアクセスの容易さ」、「今後の自分の生殖能力に影響」などを挙がりました。
これからノンメディカル卵子凍結が普及していくことが予想される日本では、過剰なノンメディカル卵子凍結を煽らない環境、正しい理解のもと行える環境を用意する上で、生殖医療者・行政・企業とも連携をしていく必要がありそうですね。

〜ノンメディカル卵子凍結の関連ブログ〜
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文責:川井清考(院長)

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