社会的卵子凍結の成功予測因子は?(論文紹介)

米国ではジェンダーの多様化の理解も進んでいて、社会的卵子凍結の割合が増えてきています。では、出生につながる予測因子はあるのでしょうか。ニューヨークのクリニックの卵子凍結女性の転機を追跡した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

  • 卵子凍結は女性年齢が若い方がよく、35歳以下での卵子凍結を推奨しています。
  • 卵子凍結時の女性年齢が38歳未満、もしくは卵子融解時の成熟卵子数が20個以上の女性では、女性あたりの累積生児出生率は50%以上でした。

≪論文紹介≫

Sarah Druckenmiller Cascante, et al. Fertil Steril. 2022.
DOI: 10.1016/j.fertnstert.2022.04.013
ニューヨーク州の生殖医療施設で2020年12月31日以前に1回以上の卵子凍結を行った全患者を対象としたレトロスペクティブ・コホート研究です。
出生に至ったか卵子を使い切った女性を対象とし、主要評価項目は患者ごとの累積生児出生率、副次評価項目は検査結果や胚移植あたりの生児出生率としました。
結果:
543人の女性が800の卵子凍結保存、605の卵子融解、436の胚移植を受けました。
最初の卵子凍結保存時の年齢中央値は38.3歳でした。最初の卵子凍結から卵子融解までの期間の中央値は4.2年でした。1人あたりの融解卵子数は中央値14個、成熟卵子数 12個、卵子融解時の生存率 79%でした。全患者のうち61%が1回以上の胚移植を受けることができました。正常受精(n = 262)および非正常受精(n = 158)胚における胚移植あたりの生児出生率それぞれ55%および31%でした。1人当たりの累積生児出生率は39%でした。卵子凍結時の女性年齢と融解時の成熟卵子数が生児出生率の予測因子でした。卵子凍結時の女性年齢が38歳未満、または融解時の成熟卵子数が20個以上の女性では、患者あたりの累積生児出生率は50%以上でした。卵子凍結・融解を行なった女性のうち、173人(32%)が治療を完結していませんでした。

≪私見≫

彼らの研究はレトロスペクティブ・コホート研究ですのでPGTなどを全例行っているわけでもないですし、一度の融解個数なども決めていません。
2021年7月1日までに1回以上 胚移植を行った患者 332名(卵子融解者の61%)であり、初回胚移植時の女性年齢中央値は42.8歳、36%が再凍結なく胚移植(2%が迅速PGTを使用)、64%が凍結して98%がPGTを実施しました。
卵子融解後、胚移植ができなかった女性のうち、多い理由はPGT後にeuploid胚がえられなかったこと(45%)、胚盤胞に進まなかったこと(27%)でした。
社会的卵子凍結、少ないながらも需要が出てきています。今後、当院でも状況に応じて検討しなくてはならない議題の一つかと考えています。

文責:川井清考(院長)

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