社会的卵子凍結のSWOT分析(論文紹介)

卵子ガラス化凍結は、年齢によって低下する生殖能力の低下に対する予防措置として、世界中で実施されるようになっています。国内では、がん治療などによって生殖能力が低下する場合に医学的卵子凍結を行っていましたが、最近では上記の理由による社会的卵子凍結のニーズも広がってきました。
「社会的」という言葉は、「必要性」よりも「希望や願望」と関連しているとされているので、実際行っている女性の気持ちに立つと「社会的卵子凍結」という言葉から「計画的卵子凍結」などの他の言葉に切り替えることも提唱されてきています。

≪論文紹介≫

Elisa Gil-Arribas, et al. Reprod Biomed Online. 2022. DOI: 10.1016/j.rbmo.2022.02.001

社会的卵子凍結は、女性の加齢に伴う不妊のリスクを軽減する戦略として、妊活をする時期が遅くなりそうな女性に提供されています。社会的卵子凍結の増加は、医療とサービスの線引きの難しさや将来の位置づけなど様々な議論が交わされ続けています。医学的には36歳より若く実施すると、凍結卵子20~25個で80~85%の出生率が期待できます。しかし卵子凍結の利用率は約10%前後と低いことが課題となっています。卵子凍結の費用対効果を考えると、若すぎるより37歳前後が一番高いとされています。さまざまな観点から40歳以上の女性には勧められるべきではないとされています。

卵子凍結の生物学的、技術的、社会的、倫理的側面に関する集中的な議論を始めるために報告者らが行ったSWOT分析結果が下記になります。

SWOT分析とは対象事項の初期段階の環境分析に使われることの多いビジネスフレームワークです。SWOTはStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4要素から構成されていて、下記では横軸を「内部環境」・「外部環境」、縦軸を「プラス要因」・「マイナス要因」に分けて分析していきます。生殖医療施設が社会的卵子凍結を行っていくかどうかは様々な観点から検討していく必要があります。

社会の大きな流れ、夫婦のありかたの多様化、女性の社会のおける選択肢の増加など様々な観点から、あらゆる角度から向かいあうテーマだと考えています。

文責:川井清考(院長)

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