ノンメディカル卵子凍結について知っておきたい情報

日本産科婦人科学会は、ノンメディカル卵子凍結に関するの考え方を下記のように記載しています。

  • あくまでも当事者の選択に委ねられる事項である。
  • 推奨も否定もしない(本会は、多くの女性がノンメディカルな卵子凍結について心配しないで済む社会環境が実現することを切望しています)。
  • 本会は、当事者女性、社会に対して正確な情報提供(動画)を行うことが必須。
  • 本会は、希望者は本会の動画を視聴し、その内容を理解・納得して行うかどうかの決定をすることを推奨する。
  • 卵子などの保存が、本会生殖補助医療登録施設と関係なく希望者と会社の契約というような形で行われ、医療者の手から離れる可能性があることについて十分に検討する必要がある。

https://www.jsog.or.jp/modules/committee/index.php?content_id=304

卵子凍結についての2022年レビューから説明に使えそうな内容を列挙してみました。
Zachary Walker, et al. Reprod Biol Endocrinol. 2022 Jan 7;20(1):10.  doi: 10.1186/s12958-021-00884-0.

(1)女性年齢37.5歳未満またはAMH 1.995ng/dL以上の女性において、良好な結果が期待できます。アメリカ生殖医学会が2021年に発表した計画的卵子凍結のガイドラインでは、適切なカウンセリングを行ったうえで卵子凍結を検討することを支持しています。

(2)卵子採取時の年齢による影響
○Fuchs Weizman N, et al. BJOG An Int J Obstet Gynaecol. 2021
43研究のメタアナリシス
35歳での卵子凍結が費用対効果良好(最低60%の利用率を想定)
○Mesen TB, et al. Fertil Steril. 2015
37歳での卵子凍結が費用対効果良好
○Devine K, et al. Fertil Steril. 2015
社会的卵子凍結を1.2周期(35歳:平均16個MII卵子)行って40歳挙児希望がある場合、35-38歳なら社会的卵子凍結をしておいた方が、費用対効果がよく、38-40歳なら費用対効果がよいと推測されました。

(3)生児出生を期待するために、何個の卵子を凍結するべき?
アメリカ生殖医学会は理想的な卵子凍結個数を推奨する根拠はまだまだ不十分とされてしていますが、下記のような報告があるようです。
○Doyle JO, et al. Fertil Steril. 2016
70%の確率で生児出生を達成する個数
30~34歳:14個MII卵子
35~37歳:15個MII卵子
38~40歳:26個MII卵子
○Cobo A, et al. Hum Reprod. 2018
35歳以下:24個MII卵子で累積着床率94.4%[95%CI = 84.3-100.4]となりプラトー
○Goldman RH, et al. Hum Reprod. 2017
75%の確率で生児出生を達成する個数
34歳:10個MII卵子
37歳:20個MII卵子
42歳:61個MII卵子
○Nagy ZP, et al. Reprod Biol Endocrinol. 2017
35歳未満:38.8個MII卵子
35歳以上:77個MII卵子
(35歳未満24名の女性の融解した卵子194個、35歳以上26名の女性の融解した卵子231個からの出生数より換算)
○Cobo A, et al. Hum Reprod. 2018
2007年から2018年まで中に、凍結卵子の利用率は4%から22%に増加しています。
○Leung AQ, et al. Reprod BioMed Online. 2021
14年間の追跡で7.4%の利用率
○Fuchs Weizman N, et al. BJOG An Int J Obstet Gynaecol. 2021
システマティックレビューでは、12~15%の凍結卵子が22~58ヶ月後に利用されていました。
○Wafi A, et al. Reprod BioMed Online. 2020
卵子凍結をおこなった女性の65%が将来的に卵子を使用すると考えていて、98%の回答者が他の人にも勧めたいとしています。

(4)周産期合併症・新生児予後について
限定的データですが、周産期合併症・新生児予後に差がないとしています。
Garcia-Velasco JA, et al. Fertil Steril. 2013
Chamayou S, et al. J Assist Reprod Genet. 2017
Anzola AB, et al.  J Assist Reprod Genet. 2015
Noyes N, et al. Reprod BioMed Online. 2009
Siano L, et al. Conn Med. 2013

アメリカ生殖医学会の卵子凍結のガイドライン
Evidence-based outcomes after oocyte cryopreservation for donor oocyte in vitro fertilization and planned oocyte cryopreservation: a guideline. Fertil Steril. 2021;116(1):36–47

文責:川井清考(院長)

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