メディカル卵子凍結/ノンメディカル卵子凍結の医療者・対象者の受け取り方(Sci Rep. 2023)

卵子凍結には、がん治療などにより性腺毒性があり妊孕性を失う前に行うメディカル卵子凍結、医学的適応以外の加齢などにより妊孕性を低下する前に女性のライフタイムマネージメントを目的に行うノンメディカル卵子凍結の二種類があります。
メディカル卵子凍結には肯定的な印象を抱く人が多い一方、ノンメディカル卵子凍結には慎重的に検討すべきという意見が多いのが現状です。同じ手技を行うのに、認識の差がなぜ生じるのか、対象となる若年女性がどう感じるのか、とても興味深いテーマです。
日本産婦人科学会はわかりやすい「ノンメディカルな卵子凍結をお考えの方へ」というページ・動画を提供しています。
https://www.jsog.or.jp/modules/committee/index.php?content_id=302

では、医療者側と卵子凍結対象者となる若年女性の受け取り方はどうなんでしょうか。
スウェーデンの女子大生を対象に医学的理由と加齢的理由による妊孕性を維持する方法としての卵子凍結に対する意識・認識の違いをオンライン調査した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

医療提供者が、メディカル卵子凍結がノンメディカル卵子凍結より女性にとって有用だと考え情報提供を行うことが、社会的ニーズや卵子凍結対象女性にとって妥当なのかどうか、改めて考えていく必要がありそうです。

≪論文紹介≫

Pietro Gambadauro, et al. Sci Rep. 2023 Apr 1;13(1):5325. doi: 10.1038/s41598-023-32538-z.

スウェーデンの女子大生(n = 270、年齢中央値25歳、範囲19-35歳)を対象に、35歳で子供がいないことを前提に医学的理由で妊孕性を低下するシナリオ(n=130)または加齢により妊孕性を低下するシナリオ(n=140)を無作為に提示し、 (1)卵子凍結実施に対しての前向きさ、(2)卵子凍結への公的助成に支持、(3) 卵子凍結実施を考慮するかどうか、(4)卵子凍結にいくらくらい払って良いかを調査しました。
(1)卵子凍結実施に対しての前向きさ(メディカル:96%、ノンメディカル:93%)、(3) 卵子凍結実施を考慮するかどうか(医学的:90%、加齢関連:88%)、(4)卵子凍結にいくらくらい払って良いかには両群で差は認めませんでした。しかし、(2)卵子凍結への公的助成に支持(メディカル:85%、ノンメディカル:64%)と差を認めました。

≪私見≫

スウェーデンの女子大生ではノンメディカル卵子凍結についての支持は高い傾向がありました。調査された時期、対象、国、同じ国の中でも都市部かどうかなどによってばらつきが大きそうですね。今後の国内の動向にも注目です。
"You cannot see the wood for the trees." 
ニュートラルな対応を検討していきたいと思います。

中国(46%)
 Zhou, Y. et al. J. Assist. Reprod. Genet. 39, 1383–1392 (2022).
イタリア(19.5%)
 Tozzo, P., et al. Life Sci. Soc. Policy 15, 1–14 (2019).
シンガポール(48.9%、医学生)
 Tan, S. Q., et al. J. Obstet. Gynaecol. Res. 40, 1345–1352 (2014).
米国(71%、医学生)
 Ikhena-Abel,D.E.et al. J. Assist. Reprod. Genet. 34, 1035–1041 (2017).)

文責:川井清考(院長)

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