回収卵子数と初回胚移植との相関(Fertil Steril. 2023)

新鮮胚移植をするなら回収卵子数を6-15個がよいとする報告が複数あります。
たくさん採卵するような卵巣刺激を行うと、卵子の質が低下したり、子宮内膜胚受容能のずれが大きくなると考えられているからです。
R.G. Steward, et al. Fertil Steril 2014
J.D. Kok, et al. Fertil Steril 2006
Å. Magnusson, et al. Hum Reprod 2018
H.M. Fatemi, et al.Hum Reprod 2013
S.K. Sunkara, et al.Hum Reprod 2011
M.H. van der Gaast, et al. Reprod Biomed Online 2006
S.K. Sunkara, et al.Hum Reprod 2011
ただし、古い論文も多く、ガラス化法を用いた全胚凍結や卵巣刺激の種類など様々な時代背景による交絡因子が隠れていそうです。ではPGTや全胚凍結が一般的になってからの、初回胚移植の成績は回収卵子数とどのように相関するのでしょうか。アメリカのビッグデータを用いた報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

OHSSを回避できる範囲内で、回収卵子数を最大化する卵巣刺激戦略が好ましそうです。

≪論文紹介≫

Michael Fanton, et al. Fertil Steril. 2023 May;119(5):762-769.  doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.01.001. 

アメリカの体外受精の90%を網羅しているSARTのデータベースを用いたレトロスペクティブコホート研究です。2014年から2019年に自己卵子での体外受精を実施した患者(402,411周期)を対象とし、正常受精卵、胚盤胞、累積生児獲得率、初回胚移植での生児獲得率を評価項目としました。

結果:
回収卵子数と正常受精卵数、回収卵子数と胚盤胞数には強い正の線形相関がありました。
累積生児獲得率は、回収卵子数とともに増加し16~20個まで増加しました。累積生児獲得率の増加は、女性年齢およびAMHで患者を層別化した場合、多変量ロジスティック回帰を用いて交絡変数を調整した場合でも同様に認められました。
初回胚移植での生児獲得率も回収卵子数とともに増加し、16~20まで増加しプラトーとなりましたが、大きな低下は認めませんでした。

≪私見≫

この報告の新規性は新鮮胚移植に限らず、初回胚移植の生児獲得率と回収卵子数の関連を調べているところです。

  • 初回胚移植の生児獲得率は回収卵子16-20個まで増加
  • 新鮮胚移植では、15個まで増加しプラトーに。初回胚移植時に凍結融解胚移植を選択した群よりも成績は低い。
  • 初回胚移植時にPGTを用いた凍結融解胚移植を選んだ場合、回収卵子数が少ない場合に高く、回収卵子数の増加に伴い緩やかな成績の増加を認めたのみであった。

新鮮胚移植の場合、回収卵子数11~15個を基準とすると、生児獲得率は0~5個(OR 0.59)、6~10個(OR 0.85)で減少し、16~30個ではプラトーであり、31~40個(OR 0.83-0.88)で再度減少となりました。
非PGT凍結融解胚移植では回収卵子数26-30個まで、PGT凍結融解胚移植では、回収卵子数16-20個までORは増加し続けました。

ここで言えることは、新鮮胚移植をするときに少なすぎるより回収卵子数が多い方が成績低下につながっていない点ですね。この報告のFig 3. D(不妊原因別)は色々考えさせられる結果となっています。

文責:川井清考(院長)

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