社会的卵子凍結は女性年齢とともに出産率は低下する。(論文紹介)

社会的卵子凍結は国内でもサポートする企業が増え、実施する女性数も増えています。社会的卵子凍結をするのに様々な背景があるとはいえ、その後の利用率の低さや凍結してから利用までの年月が比較的空くことから社会的卵子凍結を用いた生殖医療成績の報告はまだまだ少ないのが実情です。
カウンセリングするために過去の成績を把握しておくことが重要と考えられます。
今回イスラエルのグループが社会的卵子凍結を行ってから8年間追跡した結果、そして現在までの高齢女性の卵子凍結の要点を報告していますのでご紹介いたします。イスラエルは、凍結については4つの胚、20個の卵子まで認められています。社会的卵子凍結自体は保険適用外ですが、こどもが二人未満の家庭では胚移植は保険適用内のようです。

≪ポイント≫

・40歳以上の女性における社会的卵子凍結の生児出産率は女性一人あたり7.7%程度です。36-40歳の女性では40歳以上に比べて生児出産率が3.4倍高いとされています。
・35歳以上では、卵子10個を凍結保存した女性の出産率は25%で、卵子20個を凍結保存した女性の出産率は50%とする報告があります。35歳以前に社会的卵子凍結を実施していると69%の女性が生児出産に至っています。(Cobo A, et al. Hum Reprod. 2018)

≪論文紹介≫

Avi Tsafrir, et al. J Assist Reprod Genet. 2022 Oct 20.  doi: 10.1007/s10815-022-02633-7. 

2011~2018年に社会的卵子凍結を受けた446名の女性(平均年齢37.9±2.0歳:33~41歳)を対象としました。研究期間中(2021年6月まで)に卵子融解を行った女性は57人(13%)で、平均11.9個を有していました。卵子融解時年齢は43.3±2.1歳(38-49歳)で、34人(60%)の女性は、他施設で卵子を移送し治療に当たっています。理由として、当センターではドナー精子を扱っていなかった可能性に触れています。
融解後卵子生存率は、移送するより自施設のほうが生存率は高くなっています(78 vs. 63%、p = 0.047)。49人の女性が卵子を全て使用し、妊娠できなかった女性が36人、生児出産に至った女性が13人で、女性一人あたりの生児出産率は27%でした。40-41歳(イスラエル保健省の規則で許容される上限年齢)で社会的卵子凍結を実施した女性で生児出産に至った症例は11人中1人でした。

社会的卵子凍結の過去の生殖医療成績まとめ

Author, year 社会的卵子凍結実施した女性 卵子凍結した年齢 女性あたりの卵子数 融解後の卵子生存率 生児出産に至った女性割合
Cobo, 2018 477 37.6 ± 3.5 9.1 ± 3.8 84 34
Wennberg, 2019 38 38.7b 12.8 78 26
Gurtin, 2019 34 37.7b 14 記載なし 24
Blakemore, 2021 80 38.2b 14.3 74 34
Leung, 2021 68 38.1 ± 2 17 ± 9 85 33
Present report 49 37.9 ± 2 11.9 ± 9 66 26

40歳以上の卵子融解後の生児出産率報告


Author, year

卵子融解を
実施した女性

生児出産に
至った女性

Wennberg, 2019 11 0
Blakemore, 2021 11 2
Leung, 2021 6 0
今回の報告 11 1
全体 39 3 (7.7%)

文責:川井清考(院長)

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