2回目のマイクロTESE成功を予測するこころみ

Predictors of successful salvage microdissection testicular sperm extraction (mTESE) after failed initial TESE in patients with non-obstructive azoospermia: A systematic review and meta-analysis.

非閉塞性無精子症患者における初回のTESEで精子を採取できなかった症例でのsalvage micro-TESE成功の予測因子: 系統的レビューおよびメタアナリシス

Zhang F他
Andrology. 2023 May 12. doi: 10.1111/andr.13448. Epub ahead of print. PMID: 37172416.

非閉塞性無精子症では顕微授精に共する精子を採取するために、顕微鏡下精巣内精子採取術(microdissection testicular sperm extraction, micro-TESE)また、世界的にはconventional TESEも行われている。一度目のmicro-TESEで精子を採取できない場合も多いのですが、二度以上のmicro-TESE(salvage micro-TESE)を行う場合もあります。そのような場合の予測因子についての研究がありましたのでご紹介いたします。

≪研究の要旨≫

研究の背景として、salvage micro-TESEにおける精子採取率の予測因子を分析した系統的レビューおよびメタアナリシス(複数の研究をまとめて結果を出す解析方法)はないということがあります。
この研究の目的は、初回のmicro-TESEまたはconventional TESEで精子を採取できなかった非閉塞性無精子症患者を対象に、salvage micro-TESEの結果を予測する因子を見出すことです。
対象と解析方法
科学的なデータベースであるPubMed、Web of Science、EMBASE、およびCochrane Libraryにおいて、2022年6月以前に発表された、初回TESE(microdissectionまたはconventional)で精子が採取できず、salvage micro-TESEが行われた非閉塞性無精子症患者の特徴を記載した研究論文について系統的な文献検索が行われました。
結果:
このメタアナリシスには、初回micro-TESEで精子を得られなかった非閉塞性無精子症患者332症例を対象とした4つの後ろ向きの研究と、conventional TESEで精子を得られなかった非閉塞性無精子症患者177症例を対象とした3つの後ろ向き研究が用いられました。初回手術がmicro-TESEであった非閉塞性無精子症患者において、若年患者(標準平均差:-0.28、95%信頼区間[CI]:-0.55~-0.01)、および両側の精巣体積が小さい症例(標準平均差:-0.55、95%CI:-0.95~-0.15)、卵胞刺激ホルモン値が低い症例(標準平均差:-0.86、95%CI:-1.18~-0.54)および黄体形成ホルモン値が低い症例(標準平均差:-0.68、95%CI:-1. 16~-0.19)、精巣の組織型がhypospermatogenesisの症例(オッズ比:3.52、95%CI:1.30~9.53)の患者は、精子採取が成功する可能性が高い結果でしたが、セルトリ細胞唯一症候群(オッズ比:0.41、95%CI:0.24~0.73)の患者はsalvage micro-TESEで精子採取できない可能性が高い結果となりました。さらに、最初のconventional TESEで精子採取できなかった症例が、salvage micro-TESEを受けた場合、精巣の組織学的にhypospermatogenesis(オッズ比:30.35、95%CI:8.27-111.34)の患者は精子採取の確率がより高値でしたが、maturation arrest(成熟停止; オッズ比:0.39、95%CI:0.18-0.83)の症例ではほとんど恩恵がありませんでした。
結論
年齢、精巣体積、卵胞刺激ホルモン値、黄体形成ホルモン値、hypospermatogenesis、セルトリ細胞唯一症候群、およびmaturation arrestが、salvage micro-TESEの重要な予測因子であることをわかりました。この結果は、担当医が臨床的な意思決定を行う際の助けとなり、患者への不必要な侵襲を最小限に抑えることができることに繋がります。

用語)
hypospermatogenesis: 精子形成があっても作られている精子の数がとても少ない場合
maturation arrest: 精子形成の過程で分化がストップしてしまい、精子の方にまで成長していない状態
セルトリ細胞唯一症候群: 精細胞を補助して精子形成を助けているセルトリ細胞のみが存在する場合です。セルトリ細胞は精子には分化しません。
TESE: 精巣内精子採取術

≪筆者の意見≫

一度TESEを行なって精子が採取できず、もう一度行うということを負担に感じる患者さんも多いと思います。二度になると精巣に対するダメージも少なくないので、術後の性腺機能低下のリスクも考慮する必要があります。それでも行うメリットがあるかどうか、メリットがある症例はどのようなものかを解析した重要な研究だと思います。精巣の組織型はとても有用な判断材料です。組織をみるものとして、最近では、micro-TESEの前に多数箇所の針生検であたりをつけてから手術に望むということも行われてきているようです(FNA mapping)。予測する計算尺のようなものを作ってくれたら良いのですがそこまではしてくれていませんでした。アジア人では欧米人に比べてmicro-TESEでの精子採取率が低いのですが、今回の研究結果は十分参考になると思われます。

文責:小宮顕(泌尿器科部長)

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