卵巣予備能低下が流産リスクに及ぼす影響についてはまだ議論の余地がある。卵巣予備能低下と女性年齢の上昇との相関が強いことから女性年齢に関係する交絡因子として、卵巣予備能低値→流産率上昇と見えてしまっている可能性があります。若年女性に限って卵巣予備能低値は、不妊治療妊娠流産と関係するかどうかを調査した報告をご紹介します。

≪ポイント≫

若年卵巣予備能低値は生殖医療において流産率と関係しなさそうです。

≪論文紹介≫

Alessandra Chinè, et al. Hum Reprod Open. 2023 May 19;2023(3):hoad026. doi: 10.1093/hropen/hoad026.

ミラノのIRCSS Ca Granda Ospedale Maggiore Policlinico財団で実施されたレトロスペクティブコホート研究です。2014年から2021年に体外受精、顕微授精、人工授精を受けた35歳未満の女性（PCOS含む）を検討しました。
妊娠20週までに流産した女性とそうでない女性を比較しました。主要評価項目は、血清AMH値5pmol/L未満の女性の流産リスクとしました。
結果：
538名女性を該当し17％が流産しています。AMH値とAFCに基づく流産予測のROCは、それぞれ0.51（95％CI：0.45-0.58）と0.52（95％CI：0.45-0.59）でした。血清AMH値が5.0pmol/L未満の女性における流産オッズ比1.10（95％CI：0.51-2.36）、調整後オッズ比1.12（95％CI：0.51-2.45）でした。AMHの他のカットオフ値（2.9、3.6、7.9pmol/l）およびAFCカットオフ値（7および10）を考慮して解析を繰り返した。関連はみられませんでした。

≪私見≫

メタアナリシスで卵巣予備能低値と流産との関係を示したメタアナリシスは以下の二報あります。
Bunnewell SJ, et al. Fertil Steril 2020;113: 818–827.e3.
Busnelli A, et al. Hum Reprod Update 2021;27:973–988.
今後も注目すべきトピックスだと思います。

文責：川井清考（院長）

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