AMH検査をする前には正しい知識を提供しよう(Hum Reprod. 2024)
AMH検査は、採血するだけで卵巣予備能がわかりますが卵子の質は分かりません。同時に不妊原因、タイミング・人工授精の妊娠率とも関係なく、あくまで体外受精を選択した時の回収卵子数の増加に伴う治療予後の指標になり得るための検査です。
ただし、自身で測定できるAMH検査会社の中には、嘘ではありませんが、「妊娠適齢期の卵巣年齢を知る検査、卵巣年齢は年齢とともに低下して今の立ち位置がわかる、PCOSなどの病気の可能性もわかる」などと、患者様の興味を煽るようなパンフレットを準備して広告宣伝している場合がないわけではありません。
AMHに対して正しい知識をのせたパンフレットを見た時に、妊娠希望女性はどのような意思決定をするかどうかを調査した報告をご紹介いたします。
≪ポイント≫
AMH検査に関しては、「まずはAMH検査!」のようなプレコンセプションケアの一環としてとりあえず測定というアプローチではなく、ちゃんとEBMを用いて妊娠希望女性にAMH検査の正しい知識を理解してもらったうえで検査の是非を検討いただくことが重要だと思います。
≪論文紹介≫
T Copp, et al. Hum Reprod. 2024 Jul 28:deae147. doi: 10.1093/humrep/deae147.
AMH検査に関するエビデンスに基づいたパンフレットと、AMH検査会社の商業ベースのAMHは妊孕性に関すると示唆するようなパンフレット、女性のAMH検査に対する関心にどのような影響を与えるか調査しました。
2022年11-12月にオンライン無作為化試験が実施されました。女性は、AMH検査に関するEBMに基づくパンフレット、またはAMH検査を直接消費者に販売しているウェブサイトからのAMHは妊孕性に関すると示唆するようなパンフレット、のいずれかを閲覧するように967名女性を無作為に割り付けました。
参加者は、オンラインパネルを通じて募集した、オーストラリアまたはオランダ在住、出産経験がなく、現在は妊娠していないが現在または将来出産を希望しており、AMH検査を受けたことがない25~40歳の女性としました。評価項目は、AMH検査を受けることへの興味(7段階評価;1=全く興味がない~7=間違いなく興味がある)、副次評価項目は、AMH検査に関する態度、知識、心理社会的および行動的表出としました。
結果:
AMH検査に関するエビデンスに基づくパンフレットを閲覧した女性は、妊孕性関連示唆パンフレットを閲覧した女性に比べて、AMH検査を受けることへの関心が低く(MD = 1.05、95%CI = 0.83-1.30)、検査に対する肯定的な態度が低く(MD = 1.29、95%CI = 4.57-5.70)、検査に関する知識が高くなりました(MD = 0.75、95%CI = 0.71-0.82)。
≪私見≫
AMH検査の解釈は誤解を招きやすいです。正しい情報提供に努めましょう。
AMH・卵巣予備能
- 卵巣予備能検査と解釈のアメリカ生殖医学会の見解(その1)
- 卵巣予備能検査と解釈のアメリカ生殖医学会の見解(その2)
- 卵巣予備能(AFC、AMH)のメリット・デメリット
- AMHとAFCの相関について(論文紹介)
- 日本人女性の年齢とAMHレベルの相関(論文紹介)
- 経口避妊薬(OC/ピル)を使用しているとAMHは低下しますか?(論文紹介)
- AMHが変動する年齢以外の因子は?
- AMH値は自然妊娠の流産と関係しますか。(論文紹介)
- AMHはPCOSの診断に役立つの?(論文紹介)
- AMHが低いと早く閉経するの?
- ピル(OCP)・プロゲスチン製剤・子宮内避妊器具のAMHへの影響(Fertil Steril. 2023)
- 卵巣予備能低値は、不妊治療妊娠流産と関係する?(Hum Reprod Open. 2023)
- アジア諸国女性のAMH解析(Hum Reprod. 2023)
- 早発卵巣不全(POI/POF)、早発卵巣不全(POI/POF)、卵巣予備能低下(DOR)
- ビタミンDと卵巣予備能の関連(Fertil Steril. 2024
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文責:川井清考(院長)
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