PCOS患者こそ排卵周期凍結融解胚移植?(J Assist Reprod Genet. 2024)

排卵障害があると凍結融解胚移植の際には、どうしてもホルモン補充周期の方が排卵周期に比べて、排卵障害のために卵巣刺激を考慮しなくてはならない点、受診回数が増える可能性、胚移植日が直前まで定まらない可能性などから選択されやすい傾向にあります。では、生殖予後の観点からPCOS患者の凍結融解胚移植における内膜作成方法により差があるかどうかを調査したメタアナリシスをご紹介いたします。

≪ポイント≫

PCOS患者の凍結融解胚移植はホルモン補充より排卵周期がよいかもしれません。
体外受精前に、排卵を確立しておいた方がよさそうですね。

≪論文紹介≫

Kathryn A Voss, et al. J Assist Reprod Genet. 2024 Jul 30. doi: 10.1007/s10815-024-03209-3.

PCOS女性において、凍結胚移植レジュメ種類(排卵周期かホルモン補充周期(HRT))が移植後の生殖予後に影響するかどうか調査したシステマティックレビュー、メタアナリシスです。
PubMed、Embase、Web of Science、Cochrane Central Register of Controlled Trials、ClinicalTrials.govにおけるすべての研究を、MeSH用語とキーワードを組み合わせて検索しました。評価項目は生児出生率、HDP発症率、臨床的妊娠率、異所性妊娠率、流産率の相対リスクとしました。
結果:
11件の研究を対象に実施しました。排卵周期凍結融解胚移植はHRT周期凍結融解胚移植と比較して以下の特徴がありました。
生児出生率:高い(8研究、RR 1.14 [95%CI 1.08, 1.21])
流産率:低い(9研究、RR 0.67[95%CI 0.59-0.76])
HDPリスク:差なし(3研究RR 0.78[95%CI 0.53, 1.15])
臨床的妊娠:差なし(10研究、RR 1.05[95% CI 0.99, 1.11])
異所性妊娠:差なし(7研究、RR 1.40[95% CI 0.84, 2.33])

≪私見≫

PCOS患者の排卵誘発には、hMG/rFSH製剤やレトロゾールが使われた研究が選択されていて、今回の検討にはクロミフェンを用いて主たる排卵誘発を実施した研究は含まれていなさそうです。
やはり、生殖補助医療に入る前にPCOSの排卵確立方法を症例ごとに見つけておくことが、凍結融解胚移植のときには役立つかもしれませんね。

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文責:川井清考(院長)

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