回収卵子数と女性年齢に応じた累積生児出生率(Hum Reprod. 2019)
採卵あたりの累積生児出生率は回収卵子数に依存して増えることがわかっています。ただし、OHSSリスクを考えると卵巣予備能が高いから取れるだけとると言うわけではありません。オーストラリア・ニュージーランドの着床前検査やドナー卵子を除く自己卵子での回収卵子数と累積生児出生率のリアルワールドデータをご紹介いたします。
≪ポイント≫
最大累積生児出生率が観察されたのは、18~35歳の女性で25個前後、36~44歳の女性では30個以上群となりました。45歳以上の女性で何個とっても5%未満の累積生児出生率となりました。
≪論文紹介≫
Yin Jun Law, et al. Hum Reprod. 2019 Sep 29;34(9):1778-1787. doi: 10.1093/humrep/dez100.
オーストラリアとニュージーランドのすべての不妊治療センターで実施された全てのART治療周期の情報が含まれているAustralian and New Zealand Assisted Reproduction Database(ANZARD)のデータを用いた大規模な集団ベースのレトロスペクティブコホート研究です。2009年1月から2015年12月に実施された116,677名221,221の自己卵子採卵周期を解析対象としました。
採卵1回あたりの累積生児出生数は、一人生児出生するか、すべての胚が使用されるまでの周期を対象としました。卵子が採取されなかった周期は除外されています。女性年齢と回収卵子数が1回採卵あたりの累積生児出生率とどのように関連するか調査しました。
結果:
回収卵子数の中央値は7個(四分位範囲、4~12)、患者年齢の中央値は36歳(四分位範囲、33~40)でした。全体の累積生児出生率は32.2%でした。多変量回帰分析の結果、回収卵子数は、女性年齢、分娩数、周期数を調整した後も、採卵1回あたりの累積生児出生数の予測因子(P < 0.001)であることがわかりました。回収卵子数が10~14個の基準群と比較して、採卵1回あたりの累積生児出生数の調整オッズは、回収卵子数が増えるにつれて増加しました(回収卵子数1-3個では0.21(95%CI、0.20-0.22)、4-9個では0.56(95%CI、0.55-0.58)、15-19個では1.38(95%CI、1.34-1.43)、20-24個では1.75(95%CI、1.67-1.84)、25個以上では2.10(95%CI、1.96-2.25))。
女性年齢で層別化した後、回収卵子1個あたりの累積生児出生増加率は年齢が高いほど低くなりました。30歳未満/30~34歳の累積生児出生率は、25個の回収卵子数で73%/72%でプラトーに達しましたが、35~39歳/40~44歳の累積生児出生率は回収卵子数とともに増加し30個以上の場合に68%/40%に達しました。45歳以上の累積生児出生率は一貫して5%未満でした。
≪私見≫
過去にも回収卵子数の増加とともに1採卵あたりの累積出生率があがることはブログで取り上げています。
体外受精の回収卵子数は新鮮胚移植、その後の累積出生率と関係するの(F&S Reviews 2023)
回収卵子数と初回胚移植との相関(Fertil Steril. 2023)
初回採卵での累積出産率は回収卵子数に関係する?(論文報告)
OHSSと新鮮胚移植を考慮した回収卵子数(Fertil Steril. 2014)
一周期何個の卵子をとれば効率がよいの?(論文紹介:新鮮胚移植含む)
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文責:川井清考(院長)
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