レトロゾール併用卵巣刺激は効果的?(Reprod Biomed Online. 2022)

ESHRE2019卵巣刺激ガイドラインではレトロゾール併用卵巣刺激の推奨は以下のようになっています(Hum Reprod Open. 2020 DOI: 10.1093/hropen/hoaa009.)。
*Poor responder
 ゴナドトロピン刺激へのレトロゾール追加は、おそらく推奨されない。
 (Bechtejew ら. 2017) (Conditional)
*Normal responder
 ゴナドトロピン刺激へのレトロゾール添加は、おそらく推奨されない。
 (Verpoest ら. 2006; Mukherjee ら. 2012) (Conditional)
*High responder
 ゴナドトロピン刺激へのレトロゾール追加を推奨する十分なエビデンスはない。
 (Chenら. 2018) (Conditional)
ただし、これらは2018年11月までの文献検索によるデータのため、2022年に出たレビューをご紹介いたします。

≪ポイント≫

レトロゾール併用卵巣刺激周期では大きな差はなさそうですが、症例ごとに上手く利用すると成績改善する可能性がありそうです。

≪論文紹介≫

Nathalie Søderhamn Bülow, et al. Reprod Biomed Online. 2022 Apr;44(4):717-736. doi: 10.1016/j.rbmo.2021.12.006.

医療データベースを2021年8月まで体系的に検索し、31件の研究(16件のランダム化比較試験、15件の観察研究)を対象としたシステマティックレビュー・メタアナリシスです。
Poor responderにおける生児出生率は、レトロゾール併用療法により7%(95%CI、1%~13%、P=0.03)増加しました。ゴナドトロピン使用量は減少しましたが、回収卵子数は変化しませんでした。
Normal responderでは、レトロゾール併用により回収卵子数は1.8個(95%CI 0.35〜3.27、P = 0.01)増加しました。生児出生率、臨床的妊娠率、OHSS発症率に差は認めませんでした。
High responderについて報告した研究は2件のみであり、方向性を検討することはできませんでした。
全体として、子宮内膜の厚さはわずかに薄くなる影響がありそうでしたが、流産率と周期中止率は差がありませんでした。エビデンスの質は、RCTでは高または中程度、観察研究では低でした。

≪私見≫

最近の別報告でもアンタゴニスト群211名、レトロゾール2.5mg併用群109名、レトロゾール5mg併用群102名で比較したところ、レトロゾール併用療法は投与量依存性に、刺激5日目以降のエストラジオールとFSH濃度を抑制し、刺激5日目とトリガー日のLH濃度を上昇させました。回収卵子数や胚パラメータは影響を受けず、ゴナドトロピン投与量を減少させるとした報告もあります。この報告では累積出生率はレトロゾール5mg群で29.4%、レトロゾール2.5mg群で27.5%、対照群で33.6%でした(P > 0.05)。
Jing Lin, et al. Front Endocrinol (Lausanne). 2023 Nov 10:14:1289595. doi: 10.3389/fendo.2023.1289595.

この結果だけみると、やはり成績への向上は内膜に与える影響なのでしょうか。卵質の改善という切り口はあまり見当たらない印象をうけます。

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文責:川井清考(院長)

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