OHSSと新鮮胚移植を考慮した回収卵子数(Fertil Steril. 2014)

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)は予防・管理の両側面から捉えないといけません。全胚凍結メインとなった体外受精環境では以前に比べてOHSS発症リスクは減っているとは思いますが、回収卵子数の目安として引用されることが多くありますので、頻用される報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

15個を超える回収卵子数は、新鮮胚移植成績を上昇させることなく、OHSSリスクを増加させる。

≪論文紹介≫

Ryan G Steward, et al. Fertil Steril. 2014 Apr;101(4):967-73. doi: 10.1016/j.fertnstert.2013.12.026.

新鮮胚移植時の回収卵子数とOHSS発症率および生児出生率との関連を調査したレトロスペクティブコホート研究です。2008年から2010年のSART登録を用いて256381周期のデータを解析しました。
結果
生児出生率は15回収卵子数まで増加し、その後プラトーとなりました(0~5個:17%、6~10個:31.7%、11~15個:39.3%、16~20個:42.7%、21~25個:43.8%、>25個:41.8%)。しかし、OHSS発生率は回収卵子15個を超えると有意に上昇しました(0~5個:0.09%、6~10個:0.37%、11~15個:0.93%、16~20個:1.67%、21~25個:3.03%、>25個:6.34%)。これらの傾向は、GEEを用いて調整した後も変わりませんでした。
OHSSのカットオフは回収卵子数15個で、感度と特異度はそれぞれ71.1%と72.4%であり、AUCは0.784でした。生児出生についても同様の曲線が得られましたが、AUCは0.596でした。回収卵子数は生児出生予測には有用ではありませんが、回収卵子15個がOHSSリスクを最もよく予測する数であることが明らかとなりました。

≪私見≫

婦人科ガイドライン2023のOHSS記載は以下のとおりです。
「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発症・重症化予防と管理は?」
Answer
(予防:一般不妊治療・ART共通)
1. OHSSリスクの高い患者に対するゴナドトロピン製剤使用時には,低用量から開始する.(B)
2. 卵巣刺激中にOHSSのリスクが高いと判断したら,hCG投与を中止する.(B)
(予防:ART)
3. ART施行前・施行中にOHSSのリスクが高いと判断したら,以下のいずれかまたは複数の対策を施行する.
1) GnRHアンタゴニスト法または低卵巣刺激法を用いる.(B)
2) hCGの替わりにGnRHアゴニストを用いる.(B)
3) hCG投与を減量または延期(coasting法)する.(B)
4) 全胚凍結する.(B)
5)黄体ホルモン製剤単独による黄体補充療法を行う.(A)
4. 採卵後の重症化予防のため以下の薬物療法を追加する.
1) カベルゴリン(B)
2) レトロゾール(C)
3) GnRHアンタゴニスト製剤(C)
(管理)
5. 軽症患者には水分を十分に摂取させ,激しい運動を控えさせる.(C)
6. 中等症以上の患者,ならびに妊娠例は高次医療機関での管理を勧める.(B)
7. 重症患者では原則的に入院管理を勧める.(B)

~関連ブログ~
新鮮胚移植実施時の重症OHSS・血栓リスク(Hum Reprod. 2018)
中等度以上のOHSS予防(ASRM guideline2023)
レコベル®皮下注ペンの国内でのOHSSリスク評価(論文紹介)
一周期何個の卵子をとれば効率がよいの?(論文紹介:新鮮胚移植含む)

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文責:川井清考(院長)

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