超音波による子宮内膜症診断は生殖医療予後に影響(Fertil Steril. 2024)

子宮内膜症は、生殖年齢の女性の約10%~15%が罹患しているとされています。
(Bulun SE. Endometriosis. N Engl J Med 2009;360:268–79.)
子宮内膜症の確定診断は手術によることが多いのですが、一般的には超音波検査にて診断をつけることが多いです。卵巣に内膜症性嚢胞がある場合はわかりやすいのですが、深部子宮内膜症はなかなか診断基準が難しくなっています。
深部子宮内膜症はIDEAの報告(Guerriero S, et al. Ultrasound Obstet Gynecol 2016;48: 318–32.)で、骨盤前区画(膀胱、尿管膀胱領域、および遠位尿管)または後区画(直腸腟隔壁、子宮仙骨靭帯、および腟壁または腸壁)のいずれかに局在する不規則または滑らかな輪郭を有する低エコーまたは不均一な結節と定義されています。超音波による子宮内膜症診断が初回体外受精成績に影響を与えるかどうか調査した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

経腟超音波検査で診断された子宮内膜症は初回体外受精成績に負の影響を与えそうです。

≪論文紹介≫

Sara Alson, et al. Fertil Steril. 2024 May;121(5):832-841. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.01.023.

国際深部子宮内膜症解析(IDEA)グループの定義を用い、経腟超音波検査で診断された深部子宮内膜症もしくは子宮内膜症性嚢胞(以後、子宮内膜症)が初回体外受精成績に影響を与えるかどうか調査した前向き観察コホート研究です。
2019年1月から2022年10月に、25歳~39歳以下の不妊症女性1,040名を対象としました。このうち、234名(22.5%;95%CI 20.0~25.0)が、治療開始前の経腟超音波検査で子宮内膜症と診断されました。
主要評価項目は子宮内膜症の有無による初回体外受精後の累積生児出生率としました。
結果
全女性コホートにおける初回体外受精後の累積生児出生率は426/1,040(41.0%;95%CI、38.0-44.0)でした。子宮内膜症女性は、子宮内膜症のない女性(348/806、43.2%;95%CI、39.8-46.6)よりも累積生児出生率が低くなりました(78/234、33.3%;95%CI、27.3-39.4)。子宮内膜症女性の累積出生児のcrude relative riskは0.77;95%CI、0.63-0.94であり、年齢、BMI、AMH、卵巣刺激、胚移植日など調整した後のadjusted relative riskは0.63;95%CI、0.48-0.82でした。回収MII卵子数、受精率、良質胚数には2群間で差は認めませんでした。

≪私見≫

子宮内膜症が体外受精成績に影響を与えるかどうかは、一定の方向性は定まっていません。今後も注視していくテーマであると思います。

  • 成績が同等
    Wang Y, et al. Sci Rep 2023;13:6741.
    Opoien HK, et al. Fertil Steril 2012;97:912–8.
    Gupta S, et al. Reprod Biomed Online 2006;13:349–60.
    Matalliotakis IM, et al. Fertil Steril 2007;88:1568–72.
  • 成績が低下
    Barnhart K, et al. Fertil Steril 2002;77:1148–55.
    Kuivasaari P, et al. Hum Reprod 2005;20:3130–5.
    Coccia ME, et al. Acta Obstet Gynecol Scand 2011; 90:1232–8.

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文責:川井清考(院長)

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