新鮮胚移植実施時の重症OHSS・血栓リスク(Hum Reprod. 2018)

回収卵子数が増加すればするほど1回の卵巣刺激・採卵あたりの生殖医療成績は増加しますが、一定頻度で過剰卵巣刺激による重大な合併症をおこします。
最近では、過剰卵巣反応が起こった場合は全胚凍結にてリスク回避をおこなうことで以前に比べて重症OHSSなどをひき起こすことは少なくなりました。
回収卵の一つの目安として、新鮮胚移植実施時の重度OHSS・血栓リスクを調査した報告をご紹介します。

≪ポイント≫

新鮮胚移植実施時の重症OHSSは回収卵18個から、血栓リスクは15個から上昇します。

≪論文紹介≫

Åsa Magnusson, et al. Hum Reprod. 2018 Jan 1;33(1):58-64. doi: 10.1093/humrep/dex334.

2007~2013年に77,956回の新鮮胚移植を受けた39,387名の女性を対象としたレトロスペクティブコホート研究です。The Swedish National Quality Registry of Assisted Reproduction (Q-IVF)から、重症OHSSおよび血栓症イベントの診断コード(ICD 10)に関するNational Patient Registerとクロスリンクさせました。
結果:
重症OHSSは371例(0.5%)であり、回収卵子数と共に増加しました(卵子1個の増加に対するAOR、年齢で調整:1.122、95%CI:1.08;1.137)。重症OHSS発生率が1%であった18個の回収卵子数から急激に増加し、25個の回収卵子数で2.5%となりました。早期OHSSと後期OHSSの発生頻度は回収卵子数15個未満の場合は同等であり、15個以上の場合は早期OHSSが多くなりました。
血栓塞栓症イベントは14例でした。血栓塞栓症は15個以上の回収卵子数の時に発生頻度が上昇しました。回収卵子数が10個未満では5/44,312(0.01%)、10-14個では2/20,287(0.005%)、15-19個では5/8,919(0.06%)、20個以上では4/3,898(0.08%)でした。上肢血栓は一例も報告されていません。

≪私見≫

一回の採卵あたりでの生殖医療成績の増加は大事ですが、医原的な合併症が引き起こさないことが重要です。

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文責:川井清考(院長)

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